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第6章 あたたかい場所


「俺は嘘も吐いていなけりゃ、零なんて名前を出されて冗談が言えるほど軽い人間でもねえ。今言ったのが事実だ…蝶がそこまで心を開いた手前だから言っとく。後これは、あいつの前でその名前を下手に出さねえでやってほしいからだ」

「待って!…いきなりそんな事言われても、普通に考えて頭混乱するって分かんないの?蝶が何やら話したがらない事が多いなんて、クラスの様子を見てたら分かるわよ。でも、そんな事って…」

普通に考えて…そんな感覚はもう、とうの昔から俺の中では普通ではない。
白石蝶が、俺達異能力者のように普通じゃなくて、同じく俺達のように普通である事。
あいつが、普通じゃない事をコンプレックスにして普通を渇望するような、普通のただの少女である事。

蝶が普通に考えて普通でない事など、それこそ俺からしてみれば普通の話なのだ。
普通でないからこそ誰より普通に飢える、誰よりも普通なただの少女。
それが白石蝶なのだから。

「聞きたいならいくらでも話してやれるが…それこそ手前の頭が混乱するかもしれねえぞ。今の話を聞いても蝶に今まで通り接してくれると考えて、手前には話したんだ。勝手な頼みだが、それを受け入れてやってほしい…あいつは誰よりも普通じゃなくて、普通に憧れる普通の女なんだよ」

「…受け入れるも何も、それならあんなスキルを幾度となく使ってきたようにしてこなすのも、あんな年であそこまで何でもそつなくこなせるのにも、逆に納得がいきすぎたくらいよ」

そう、年齢などというものを考えなくとも分かる、異常なまでの戦闘センス…そして、手練になる程見て感じ取ることが出来る、あの熟練さ。
経験でしかものを言わないようなものを、あいつはいくらでももっている…それを誰にも見破られないよう、隠して過ごしている。

「あいつが今普通に学生やってんのだって、普通に考えたら異常な光景だ。普段あんなあどけない子供の顔した蝶のどこに、恐怖を感じる?…それがねえから、本物なんだ」

「!…嬉しそうにしてんのは?」

「そのへんは本当にそう思ってるからそうしてる。根は素直で分かりやすいし、本当にただの子供だからな。まあ、普段の生活がそんなだからこそ、俺にも見破れねえような芝居なんか身につけやがったんだよ。」

ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえ、確認を取るように、繰り返された。

「…本当に、蝶自身が零だって言うのね」
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