• テキストサイズ

Replay

第6章 あたたかい場所


「あんな芝居なんて、蝶には誰も教えていなかったんでしょう?…私だって、蝶の事をよく知っていなかったら見破れなかった」

「!表情で読み取れたわけじゃなかったのか?手前の専門だろ」

「無理よ、あんな自然なの…あんたがその場にいたんならまだしも、あれは人前で弱い所を隠して強がってただけだったもの。ただ、ここで今日あんたの名前が出てから何だか態度が弱々しかっただけ」

殺気も視線も、あの子ならもっと冷たいものを出せたでしょうに。

俺の名前が椚ヶ丘で出されたという事と、蝶が殺気なんてものを出した事。
その事が気になって何があったのかと聞けば、零なんていう名前が飛び出してきやがった。

俺が昔助けられた女と瓜二つ…いや、それこそ本人なのではないのかと思える程に同じなあの女。
同じ…俺も一度しか見かけた事はないのだが、確かに俺の傷を治した真っ白な女と全く同じだった。

顔が、身体が、雰囲気が…そんな次元の話ではない。
俺からしてみれば、寧ろ雰囲気は殺しと癒しという点では真反対のもの。
しかし、どう思い出しても同じにしか思えない、あの二人。

けれども、俺の感覚がそうだと認識してしまっていても、どう考えてもあの二人が同一人物であるはずはないのだ。

「…手前は、蝶と零との関係を聞いたか。蝶が喚くほどに目の前で泣いた奴だ。個人的にでも、少しでも、蝶とあの女の関係性を教えられたか」

「?蝶は、何にもないって言ってたわよ。ただずっと一緒にいただけで、何も無い…それで、あんたの助けを間接的に借りて零を殺したって。蝶みたいな桁外れの強さとあの子の能力があるんならまあ納得だけど…ろくな噂を聞いたことないわよ、零って」

「奇妙な殺し方だろ。…俺も、聞かされただけだし現場を見たことがあるわけでもねえが、その手段はよく知ってる…よく知ってるし、よく見てきたし、そして蝶が言った通り、零を殺す手助けをした」

電話の向こうでは、全くわけのわからないといったような声が聞こえる。
その場には相手の女しかいないらしく、蝶がそれ程までに心を許しているただ一人の相手なのならばと…本人のいないところで勝手な話だが、もうその話をむやみに椚ヶ丘で出さないためにも、全てを伝えようと決めた。

「いいか、一度しか言わねぇ。誰にも言わず、零なんて名前も出すんじゃねえ……______」

「はっ…?何、言ってんの?」
/ 2703ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp