第2章 暗闇の中で
本当は隙を見てすぐにでも脱出したかった。
けれど、見に纏う衣服はボロボロになり、あまつさえ何も見えないこの状況では、能力なんて使えない。
更に、今は何人かの不良に囲まれ、身動きも取れず、視界の奪われた暗い世界にたった一人なのだ。
暗いところと複数の男。
一つ一つがあるだけならば何ともなくなっていたのに、私を恐怖に陥れる条件がいくつか揃ってしまった。
「ほぉ、身長の割に結構あるな。着痩せするタイプか?」
『…んん、んぁ、っ…や、やめてっ!』
背中から代わって今度は胸を指でいやらしくなぞられる。
こんな感覚、私は知らない。
『な、何これ……何なのこ、れ……っふぅ、!』
全身がピクピクと、男の手に反応する。
「あれ、負けないっていってなかったか?……お、おい。」
男が私を言葉でなじる。
しかし、すぐに私の様子の変化に気が付き、ざわめき出した。
「ははっ、こいつ震えてんぞ。さっきまでの威勢はどうしたよ?…なんだ?ガキのクセして一丁前に、男のことでも思い出したのか?」
男のこと、そう聞いて頭に思い浮かべたのはやはりあの人の事。
その想像は、今まで何とか保ってきた私の自我を崩壊させるに十分事足りるものだった。
『ぅぁ、やだ、やだぁ…っ、見ないで、こんなっ、ああっ、ん、!!』
他人に、自身の恥ずかしい姿を晒しているということ。
それはまるで、愛しい彼を裏切っているような気がして。
そして、感じたことのない、男達からのこの刺激で自分がおかしくなってしまうのではないかという新たな恐怖。
私の頭では整理しきれない多くの感情が、遂には涙となって溢れ出た。
『ック、ヒッ…ぁああっ!ひぁあ!!?』
「泣いちゃったよ、そんなに良かったか?」
男の指は胸から移動し、鎖骨を伝う。
『え、あ、ダメ!!そっちは…~~〜〜!!!』
私が最も弱い箇所である首筋。
そこを撫でられ、今までで最も強い刺激に、思わず背中を仰け反らせた。
が、それに目をつけたのか、今度は生暖かいヌルッとした感触が首元を襲う。
大きな水音が立てられながら、ようやく舐められているのだと理解した時には、もう私に抵抗する気力は残っていなかった。
『それ、やだぁ!!首、くび…あああだめ、……っひゃ、ぁ…っっ』
男達は、無言で私の体中を舐めて回る。
室内に響くのは私の声だけだった。