第6章 あたたかい場所
『わッ…!……中也さん…?』
「ありがとな悠馬。だが悪ぃけど、蝶を甘やかす権限は俺が持ってんだわ。手前といえども俺の前でんな事ばっかりさせねえぞ」
頭に手を置かれて、何故か中也さんが磯貝君に張り合っているように見える。
他の子達もそれは同じらしく、磯貝君もキョトンとしていた。
「…!ああ、すみません中也さん。ついつい、こんな素直な蝶ちゃんが可愛かったものですから」
『へっ!?ちょ、何で磯貝君まで中也さんみたいな事言ってんの!!?』
爽やかな笑顔に悪意はない…多分。
「ほお…?そうだろ、でもやらねえからな、それだけは覚えとけ。……行くぞ」
『え、あの!喧嘩じゃないですよね?』
そんなんじゃねえよと中也さんは一言言って、皆に背を向けて手を振る。
「ただ、あいつが想像を絶するレベルに気の利く奴だってことはよぉく分かった」
『?…あ、皆また明日!』
口々に皆からも挨拶が返されるけれど、私一人が頭を混乱させたままで、皆は何故か困り眉で見送ってくれた。
喫茶店を出てから何だか中也さんが早足で、家へ入ってお互い靴を脱いだら、その瞬間に横向きに抱き抱えられた。
『きゃっ、!?ち、中也さん!?何でいきなりっ…』
そのまま何も答えてくれずにスタスタと歩いていって、数日ぶりに中也さんの部屋に連れ込まれ、中也さんのベッドに優しくおろされる。
すると私の肩を抱きしめて、また耳を甘噛みして、私に何も言えないようにさせた。
『ぁッ…それっ……は、ぁあッ…ん……っ』
「…………スイッチ入ると、こういう事しても嫌がらねえようになるんだな。まあ俺がやって本気で嫌がってたことはなかっただろうが」
『ひあぁッ…!!』
そこで喋らないでって、言いたい。
なのに、それさえもが中也さんの言うように、持病を発症した私にはやだと言うことも出来ないくらいに気持ちのいい刺激なのだ。
中也さんにこうやってビクビクさせられて、頭の中まで中也さんでいっぱいにさせられて、めちゃくちゃになっちゃうのが……とてつもなく気持ちいいの。
『ね、ねッ…ちゅやさッ……ああ、っ…』
「………キス、して欲しいか」
『してっ…ほしい……ッ!ん、うっ………ッハ、ァ…え、なんでっ…』
すぐに中也さんはしてくれて、しかしまたすぐに離される。
「悪い……大人気ねえ事に、最後悠馬に嫉妬した」
