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第6章 あたたかい場所


「……蝶?離れ『ません』…………あれ、蝶さん?」

珍しく一日明けて、久しぶりに素直に感じるこの感覚。

『…中也さん、私のこと離しちゃうの?』

目も合わせずに一言言えば、ビクリと中也さんの手が止まった。

『あ、また止まった…もう終わり?ここにいちゃ、ダメ?』

「何、どうした、何があった白石」
「あー…蝶ちゃんがまたすごい方向に」
「甘えにわがままおねだり…まさかこっちが本性か!?」
「岡島君だけ何か違うよそれ!!」

顔を上に向けて、中也さんの目に訴えかけるように見つめる。
中也さんの顔が段々と赤くなってきて、しかしタラリと汗が伝って、なんとも言えない表情になって焦り始める。

「お前、まさかスイッチ入った?持病出た?」

『そんなのどうだっていいじゃない。ねえ、まだ?中也さん…』

中也さん症候群を発症してから中也さんがここまで撫でるのに時間がかかっているのは過去最高で、まだ?まだ?と切なさが募って泣きそうになる。

岡島君の言う通りと言うべきか、これが素直になりきった私の本性だ。

「ま、まだって…」

『…ギュウッてして?いっぱい撫で撫でして……?』

呆然としたまま恐る恐ると言ったように中也さんはまた撫で始めてくれる。
ギュウッと加減が足りないから私が腕に力を入れれば、すぐに返してくれた。

それに気分を良くして、また中也さんの胸にゴロゴロと擦り寄る。
これを待ってた。
昨日もずっと、これを我慢してた。

「えっと、持病って?白石さんって何か持病を持ってるんですか?」

「ああ…いや、病気ってわけじゃねえんだよ。ただ、こいつの機嫌が頗るよくなって、やけに俺に甘えて離れようとしなくなる状態があってな?……蝶は勝手にそれを中也さん症候群だとかいって名付けてくれてっから、持病って呼んでんだ」

中也さんが私を上手くあしらいながら説明を続ける。

「スイッチ入ると本当に離れなくなんだよなこれが…まあ素直で可愛らしいからいいんだが」

『…中也さんもう一回』

「あ?スイッチ入ったら『違う、その後』…あー仕方ねえな…素直で可愛らしいです……これでいいか」

えへへ〜と更にご満悦になって、中也さんにしがみつく。

「猫?」
「猫だな」
「つかどっからどう見てもあれが素で願望だろ」

「「「「あ…」」」」

中原さんもデレッデレじゃねえか、と誰かが言った。
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