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第6章 あたたかい場所


『うっ……うぅっ………!』

まさか本気で全部食わせるとは…なんて前原君の声が聞こえる。
そうだよ、この人やるって言ったら容赦なくやる人なんだよ。

羞恥に泣きながらもヤケになって食べ終わり、カエデちゃんと潮田君に宥めてもらいながらいじけたように泣きすする。

「でも本当、中也さんの前じゃあいいおもちゃにされてるよな」

「おい、人聞きの悪い事言ってんじゃねえよ。これでも食べにくんだぜ?可愛らしいだろ」

人前で何言ってんのよなんて思うも、それ以上に恥ずかしい事をしたばっかりでそれどころじゃあない。

『お、乙女の心が弄ばれて…っ』

「堪能させてもらったよ、ごっそ〜さん」

『乙女の敵…!やだもう、今日家出する!!カエデちゃん泊めて!?』

「ええっ、私!?」

私の家出発言に驚く皆。
しかし中也さんがただ一人、いつもなら一番に心配するのに驚く素振りも見せない。

とりあえず散々にたまった食器を少しでも運ぼうと立ち上がって、拗ねたようにヤケになって中也さんの近くに行った時だった。

グイッと腕を引っ張られて、中也さんの元にポン、と抱き抱えられる。

『きゃ、っ……ぇ、とっ!?』

「食器は悠馬が運んでくれんだろ。……家出もいいが、それすっと帰ってくるまでの間もう会えねえなぁ。折角蝶のために早く仕事片付けて帰ってきたんだが…仕方ねえ、今日はもう俺一人でゆっくり帰るとすっか」

中也さんの発言に沈黙が流れる。

『…会え、ない?一緒に寝れない?』

「お前が家出するんならな?」

『ち、中也さんなしのまま中也さんなし生活に突入?』

「お前が家出するんならそうなるなぁ」

皆して中也さんにうわぁ、という目を向け始める。

「な、中原さん?流石にそんな大人気ないこと言ったって、白石が素直に意見を変えるとは『ヤダ、家出しない』変えたあああ!!?」

ギュウッと中也さんの方に振り返って抱きつけば、待ってましたと言わんばかりに中也さんからよしよしと、恒例の頭撫でもつけて抱きしめ返される。

「そうか、俺は別にどっちでも良かったんだぜ?お前のしたいようにすればそれで」

『中也さんと一緒にいる。中也さんといたい』

「そうだな、よーしいい子だ」

「「「なんて教育してんだこの人…」」」

んじゃ席戻れ、まだ紅茶来んだろと中也さんに肩を掴まれた。
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