第6章 あたたかい場所

『一個目完食ー…苺良かったなぁ、次はチョコバナナにしよっかな』

｢スプーン二つあんのに結局中也さんしかスプーン使ってねえとかなんだよこのリア充｣
｢今日はなんか頗る機嫌が良さそうだね蝶ちゃん。昼間イリーナ先生といた時は何事かと思ったけど｣

前原君とカエデちゃんの言葉にピタリとかたまる。
待て、今の今まで気にしてなかったけど、私中也さんに食べさせられてたじゃん！？
しかもスプーン一個しか使ってないし！！
間接キスになってるし！！

『……ち、中也さん？そ、の…っ』

｢あ？………すっげえ美味かったけど？｣

『！！か、確信犯！』

｢いや、いつ自覚すんのかと思ってよ。やっぱこういうとこ馬鹿だよなお前。やっぱ美味ぇわ｣

皆の前で延々間接キスのオンパレードだっただなんて信じられない、本当に馬鹿だ、何してんの私！？

『あ、あああ…わ、私デザートにされちゃった！？』

｢｢｢純粋な女の子に何言わせてるんだよ！！？｣｣｣

｢蝶、だからお前それだと意味が！！……まあいい、それなら好きなだけそうさせてもらう。悠馬！悪い、これ一本さげてくれ｣

中也さんは使ってない方のスプーンを磯貝君に渡してしまって、ずいっと私の方に身を乗り出した。

え、待って、何してくれてんのこの人。
しかも何で磯貝君それに従っちゃうの、苦笑いでこっち見てるくらいなら置いていってよ。

｢たっぷり時間かけて食べてやるよ…パフェが二つにケーキが三つと、後はアイスが八つ残ってるもんなぁ？｣

『ふえ！！？ぜ、全部こうするの！？』

自分で自分の首をしめている。
ダメだ、中也さんの目が本気だ。
ﾆﾔﾘと笑って当たり前だろなんて、かっこいい顔してとんでもないこと言ってるよこの人。

『た、たっぷり時間かけてとか……！！』

想像しただけでも恥ずかしい。
ショートしてしまいそうな程に顔に熱が集まってる。

｢こっから時間はいっぱいあんだから、頼むぜ？俺にはお前のそういう顔が一番のデザートになるからよ｣

｢｢｢だからさっきからなんて事教えてるんだよ！！！｣｣｣

｢あ？手前らがごちゃごちゃうっせえからもう開き直ってんだろが。言っとくが蝶に惚れたってやらねえぞ、こいつは俺のデザートに自分からなりに来た奴だしな｣

無慈悲にもチョコバナナパフェはテーブルに運ばれる。
スプーンを手に取る中也さんに色々と覚悟した。