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第6章 あたたかい場所


「んでまあ電話で甘えにくそうにしてやがるなんて聞いたらなあ?…悪い蝶、昨日と今日の朝に何か様子がおかしかったって確信持てたのは、正直なところ電話があったからだ。無かったら多分、知らねえふりして昨日みたいに対応してたよ」

俺の方から行ってやらねえと、そういう時に限ってお前は素直に甘えに来れねえ時があるからな。
言いながら私の背中をトントンと撫でて、またおでこにキスをされる。

『ん…、中也さんのキス魔。したいだけじゃないの?』

「正解だ。よく分かってんじゃねえか」

『やっぱり親バカ、私バカ…』

「やっぱり馬鹿だわお前、まあ暫くまだそのまんまでいいが」

中也さんにまで馬鹿呼ばわりされて、寺坂君にもイリーナ先生にも言われていたのを思い出す。

『馬鹿じゃないよ、中也さんよりは』

「いいや、俺より馬鹿だお前は。つうか何気に馬鹿にしてんじゃねえよこのド天然」

『天然じゃないですし、私は中也さんバカなだけです…天然とか中也さんの方じゃないですか』

ムッとふくれて機嫌悪そうに言えば、中也さんにクスクスと笑われる。
何がそんなにツボだったのかは全くもって理解出来ないのだけれど、私を馬鹿に思っているということだけはよく伝わった。

「悪いな、俺は天然でも鈍感でもねぇんだわ…否定するあたり、お前は本物だよ……プッ」

『その笑い方なんか失礼』

「だから悪いって…あーおもしれぇ」

スッと離れてリビングに戻って行って、何をするのかと思えばテレビを消しに戻っていた。
その場に取り残されたように、テレビに中也さんを取られたような気がしてまたむくれれば、中也さんがまた吹き出す。

『……何ですか』

「いや、離れてそういう顔すんのはあんまねぇからよ……プッ、まさかテレビに嫉妬するとは」

わざと離れたのかというのと本当に全部見抜かれてるのでカアア、と赤くなって、ムキになって声を大きくする。

『だ、だって中也さんが離れるからっ…!!し、知っててやってたとかタチ悪い!意地悪!!』

「な?だから言ったろ、天然でも鈍感でもねえって」

『乙女の心をなんだと思って…!中也さんの一番も私じゃなきゃダメなの!テレビなんかに負けちゃやだ!』

かなり意味の分からない事を叫んでいるが、中也さんは涙目で笑いながらはいはい、と言うばかり。

『三度の飯より私でしょ!?』

「ブッ!!?」
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