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第6章 あたたかい場所


結局組合が来ることはなく、こちらから仕掛けることもなくといった状態で沖縄に行くことになってしまった。
それはそれで、私自身の事だけを考えると暫く安心なのかもしれない。

良かったのかなんなのかよく分からないままに、家への扉を作る。
入ろうとするのはいいものの、やはり中也さんに見抜かれるのが怖くて…でももう白石蝶を演じるのが辛くて辛くて仕方がなくて、ドアノブを握るのを躊躇う。

私が、白石蝶なんだよ。
白石蝶は、私なんだよ。

何か聞かれたら、聞かないでって、わがまま言おう。
私が考えてる事がバレちゃったら中也さん、また怒っちゃうだろうけど…わがまま言って、中也さんに甘えよう。

明日からちょっとだけ、一緒にいれなくなっちゃうんだから。

扉を開いて中に入ると、珍しく中也さんはもう帰ってきていた。
よっぽど暇だったのか、ソファに座った状態でテレビをつけているのにぼーっとしている。

靴を脱いで揃えて、中に入ってひょっこり顔を覗かせても、何かを考えているのか何も考えていないのか、中也さんは全く気づきそうにない。

『あの……ち、中也さん…?』

呼びかけるとビクッと肩を跳ねさせて、中也さんが恐る恐るこちらを向いた。
それにこっちまでびっくりしてしまって、久しぶりに二人になった家の中で、中也さんに隠れるように片目だけを覗かせた。

「蝶…?ち、蝶だよな……ビビった…んで、何でんなとこで隠れてんだよ?とっととこっち来いって。俺、お前が帰ってくんの待ってたんだからよ」

『へ?待ってたって…』

「……お前んとこのあの女教師から言われたとかで、烏間さんから連絡が来たんだよ。んで、まあ考えてみりゃ確かにその通りだなと思ったから、とっとと仕事片付けて来たんだ」

いつまで経っても行こうとしない私に遂に中也さんが立ち上がって、こちらにずんずんと歩いてくる。
え、何、イリーナ先生も烏間先生も何言ったのいったい。

『ち、中也さん!?連絡が来たって、いったい何を……ひゃぅッ…!』

慌ててわけを聞こうとするも、中也さんにふわりと包み込まれて頬に手を当てられて、突然おでこにキスなんてされたものだから、上ずった変な声が出てしまった。

反射的に両手で口を塞ぐと、腰を屈めた中也さんと目が合わせられる。

「別に?今日はたっぷりお前を甘やかしてやってくれって言われたくれえだよ…手ぇ退けろ」
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