第6章 あたたかい場所
「成程、組合だったのだな……まさか本当に存在していたとは」
『はい。横浜の方に何かあれば私はそっちに行かなければならないので、作戦の頭数には入れないよう頼んであるんです』
作戦書を見た後だと、実行場所が海の上ってだけでも十分に私にとっては参加出来そうにないものだったのだけれども。
ロヴロさんに説明すれば、何か考えるような素振りを見せて、烏間先生に向き直った。
「この子の言う異能力者だが…あの音速で動き回れるような標的でもない限り、無闇に相手が出来たものではない。俺でも相手などしようものなら、すぐにあの世へ送られてしまうだろう」
「……何が言いたい。生憎、まだ異能力を見たこともないため、そのあたりの助言をもらえるのであれば欲しいところだ」
ロヴロさんが烏間先生を見据えて、一層真剣になって言う。
「率直に言おう。もし異能力者が攻め込んで来るようなことがあれば、この子の言うようにまず逃げるんだ。この子が殺されることがないのであれば尚更…助けようなどと考えるんじゃない、逃げるんだ」
私の思う事を念押しするようにロヴロさんが言ってくれた。
烏間先生もイリーナ先生も、ロヴロさんがそういうほどのものなのだとは予想していなかったのか、顔に焦りの色が見える。
「教師としても何も、唯一この教室で異能力者に対抗し得るのは白石蝶…彼女のみだ。彼女の助けになりたいのであれば、真っ先に避難して人質を作らないよう努めること……足でまといがいると、最も彼女を苦しめる」
『!ロヴロさん、何もそんな言い方をしなくても!!』
「君はあれだけ慕っている中原中也と離れるような羽目になってもいいと言うのか?」
ロヴロさんの言葉に反論すれば、すぐに大人しくさせられた。
どうしてかは分からないけど、私を思ってそう言ってくれているらしい。
でも、足でまといだなんて言い方…
「……白石さん、異能力者の持つ異能力とは、例えばどのようなものがある。何でもいい、探偵社の方のものでも、ポートマフィアの方のものでも」
『烏間先生…』
異能力の事をもっと知りたいということだろうか。
私の周りにいる人達の異能力を、出来るだけ分かりやすいように説明すると、想像もつかないといったような顔になる。
『後は遠隔操作で人の寿命を奪い取る能力や、別空間に人や物を取り込むような能力…私が知ってるのはこれ位です』
