第6章 あたたかい場所
「……昨日の電話でだって、あんたの質問にとんでもない返し方してきたでしょ、あの男は。あれ、どう考えてもあんたがどういう返事をすればどうなんのか予測してああいう言い回しにしたのよ」
『い、いないって言ったらいないって分かるのになんで…!私のこと恥ずかしくさせたらそれどころじゃなくなるから!?』
「あー…もういいわあんた、私が悪かった。とりあえずあんたが大バカなのはよく分かったから、こっち戻ってきたら安心して告白でもなんでもすればいいわ」
『急に対応雑になってませんか!?…こ、告白っ……とか、あ、改まって考えたらなんかっ……!』
顔に熱が集まってきて、ドキドキと動悸が激しくなる。
これだ、昨日私が殺してた気持ち。
白石蝶から殺していた気持ち。
「……まあ、今日はちゃんと素直になりなさいよね。あんたが話したくないってんなら話せとは言わないけど、そんなに泣いてちゃあの男だって悲しむわよ」
『!………ありがとうイリーナ先生…ありがとう』
今度は私の方から抱きついて、せいいっぱいのありがとうを伝えた。
「これは敵わないわ……またいつでも、何でも言いなさい」
コク、と頷いて、暫くイリーナ先生に縋るように、涙が乾ききるまで抱きついていた。
お母さんって、お姉さんって…いたらこんな感じなのかなぁ。
女の人にこんな風にしてもらったの、初めてだよ…。
最終調整を終えて皆が帰った後、ロヴロさんに呼ばれて先生達と一緒に話を始める。
なんでも、ロヴロさんが私に聞きたいことがあるらしい。
「今回のこの作戦書…これは君が作ったのか?」
『?いえ、これは皆が作ったものですよ。アドバイスはしましたけど』
「アドバイス?」
アドバイスと聞かれて、私が皆に言った、殺せんせー限定の作戦書作りを説明した。
「成程、道理であの標的に適しすぎた作戦書になっている……が、この一番最初の精神攻撃というのは、かなり残酷な暗殺だな」
『あ、それは唯一私が提案したやつですね』
「君か…」
ロヴロさんも烏間先生も顔を青くしていて、冷や汗を流していた。
「にしても、作戦にもこのクラスの技術にも…とどめの二人にも心配はない。寧ろ期待もしている。しかし…何故君は今回、動かない?」
そうか、ロヴロさんはまだ知らなかったんだ。
今の横浜で、いったい何が起こっているのか。
