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第2章 暗闇の中で


蝶が倒れた後、先程まで続いていた喧嘩という状態は姿を消し、ただ一方的な暴力が続いていた。

神崎と茅野、そして蝶は、車に載せられて拉致された。

残った班員は、高校生の不良たちによって打ち負かされ、気がついた頃には何も残っていなかった。

「犯罪慣れしてやがるよあいつら。……俺の手で直接処刑させて欲しいんだけど、」

負かされたこと、そして何より、自分が守ろうとしていた蝶が自分を庇って連れていかれたという、己へのやるせなさに赤羽は腹が焼けるような思いだった。

「チッ、…怒ってる場合じゃねぇだろーが、ったく……」

路地の建物の上から聞こえた、一人の男の声。

「だ、誰だ!?」

辺りを見渡す潮田と杉野、そして奥田愛美。
聞いたことのない声が呆れた様子で話しかけてくるのに驚いている。

しかしそんな中、赤羽はこの声を知っていた。

「よっ……と、……んで?今からどーする気なんだよ、手前ら。」

下に飛び降り、着地した男を見て、一同は目を丸くする。

「だ、誰ですかあんた……そんな黒くていかにも怪しい格好した小さい人なんて知り合いにいないんですが。」

「誰が低身長だ!?…まあ、そんな事は今はいい。本来なら手前らなんかの前に出ちゃ、あいつの仕事を邪魔しちまうから、出る予定はなかったんだが。」

帽子を右手で外して、四人を見渡す男。

「緊急事態だ。蝶まで攫われたんじゃしょうがねぇ、手ェ貸してやる。」

「まさかこんなことになるなんて思ってなかったけど…ごめんね、蝶ちゃんあんな目に遭わせて。でも協力してくれるなんて有難いよ、“中也さん”?」

「え、知り合いなの?」

「渚君たちも名前だけなら聞いたことあるはずだよ?」

聞き覚えはあるがどうも思い出せないその名前の正体を導き出したのは、彼から発された“蝶”という名前。

「…あ!!蝶ちゃんの好きな、噂の中也さん!?」

好きな、とまで言ってしまった奥田に焦る他の三人だったが、

「あ?…ああ、あいつは割と俺に懐いてたしな」

と見当違いな様子を見せる中原。

だが今は攫われた三人の救出を急がなければ。

「赤羽、携帯あるよな?とりあえず担任に連絡入れとけ。……よし、こっからは俺が仕切らせてもらうぜ。」

こうして、中原が指揮をとった救出計画が立てられ始めた。


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