第6章 あたたかい場所
「とりあえず明日からは、ちょっとは安心なんでしょ?流石に横浜からあんな島までじゃ距離もあるし…私のところでいくらでも素直になりなさいよ。他の奴らに言えなくて私に助けを求めて来たんなら、好きなだけ泣いていきなさい」
『ん……っ、うん………ッ』
ただの子供になったみたいだ。
中也さん以外の人の前で、こんなに自分を出したのなんていつぶりだろう。
「何よ、こんな可愛いところもあるんじゃないあんた。あの男も幸せもんね、こんな蝶にそんなに想ってもらえて。明日からは折角のリゾートなんだから、今日は全部口に出さないでもいいけど、ちゃんと甘えたいだけ甘えてきなさい」
ちょっと間会えなくなるんだから、と言われて、本当に全部打ち明けてしまって良かったと思った。
そうだよ、中也さんと数日離れちゃうのに、その前にこんな辛いまんまじゃ嫌だもん。
『…ん、……イリーナ先生、お願いがあるんです』
「何?言ってみなさい」
『…昨日買った帽子、沖縄から戻ったら渡す予定…なんですけど。中也さんにバレないように持っていこうと思ってるんです』
今度こそ気持ちが伝わるように告白しようと、そう考えているとイリーナ先生に伝えた。
「成程ね。それで、お願いって?」
『そ、その…どうすれば中也さんに伝わるかなって……思って』
イリーナ先生の目が点になる。
「あ、あんたまだそんな事考えてるの…?自分からキスまでした上に向こうもそれ以上にして返してきて、応えたんでしょ。それでもう十分伝わってるんじゃないの?」
『ち、中也さん親バカだから…そういうとこ鈍感だし』
「あー…寺坂の言う通りこういうところはあんたも相当バカみたいね。……じゃあもう、好きとかうんぬんを言ってから、直接恋人にして下さいとでも言えばいいじゃない?」
『ふええ!!?こ、ここ恋人にって、そんな!!』
恐れ多すぎる!!なんて言っていればまたため息を吐かれた。
「それならあんたの言うような鈍感な勘違いはされないし、何の問題もないでしょ」
『だ、だってそれっ…ふ、振られたら私立ち直る自信が!!……ご、誤魔化しが効かなくなっちゃう』
「告白でしょうが……ていうかあの男があんたを傷つけるような返事をするとは思えないけど」
イリーナ先生の言葉にピタリと大人しくなってパッと顔をあげれば、照れたように顔を背けられた。
『……え?』
