第6章 あたたかい場所
『…訓練止めてすみません、気にせず続けて下さい』
烏間先生が仕切り直してくれて、潮田君とロヴロさん以外はすぐに戻った。
零は死んだ、生きてなんていない。
『零が…彼女が死んだのは、私が一番ちゃんと分かっています』
潮田君の聞いている前でこんな事を言うものではない。
他の子達は銃声の中にいるから大丈夫だろうけど、なんせ私はその単語を聞きたくない。
彼女の話は一般人にするようなものではないのは確か。
けれどもそれ以上に、私は彼女が大嫌いで大嫌いで仕方が無いのだ。
今だって、記憶の中からあの男と一緒に捨て去ってしまいたいくらいに…名前を聞いただけでも身震いするくらいに。
「君と彼女の間には何も無かったのだろう…なのに何故、そんなにも取り乱している」
ロヴロさんの目を見て…奥から溢れ出る殺気が抑えきれなくて、視線と声を通じて殺気が漏れる。
『………零を…彼女が死んだのは私が原因だからです。…彼女を殺したのは私ですから』
「!!」
「えっ…?」
遠目でイリーナ先生が驚いているのも感じる。
さっきのせいでロヴロさんは口が開けなくなったのだろうか。
顔色が悪いため、すぐに自分を押し込めた。
「君が…?いや、君ほどの人間であれば不思議なことではないが…」
『はい。間違いなく私が、この手で殺しました。中也さんも勿論、ちゃんと知ってます。寧ろ、あの人のお陰でそうすることが出来たんです』
意味がわからないといった顔を向けられる。
それもそうだろう、肝心な説明なんて一切していないのだから。
私が、嬉しそうな顔をしているのだから。
「中原さんのおかげでって……二人は殺し屋だったって事?」
『ああ、勘違いさせてるかもしれないね。中也さんは手出しなんてしてないし、直接彼女を殺すために動いてなんていない…中也さんは私を助けてくれただけ。敵から…敵だけじゃなくて零からも、私を解放してくれただけ』
これ以上は言えないよ、と人差し指を口の前にもっていって、本当に穏やかな顔になる。
中也さんのおかげだ、何もかも。
彼女を殺してやっと中也さんと幸せになれた。
やっと、女の子になれた。
『怖い事言ってごめんね。でも私ってこういう人間だから…皆には手なんて出さないけど、何かあったら敵なんて殺すつもりで皆を守ってみせるよ』
殺しはしないけど。
……零を殺しておくために。
