第6章 あたたかい場所
0…零、ゼロと呼ばれるその女性を、私は良く知っている。
その人は私を最も理解し、私が最も理解する人物。
「生きてるか分からないって…」
「何せその名の通り、目をつけられれば最後…無に還ってゼロになる。殺し方は様々だが、例えば突然自分の吸う空気が無くなる……身体の水分が全て無くなる、様々なものが無くなって、気付けば命が無くなっている」
ヒッ、という悲鳴がどこかで聞こえた。
ロヴロさんの話し方とオーラのせいもあるだろうけど、普通の子達からしてみればそれが普通の反応なのだろう。
「元々都市伝説のような人物だが、目撃証言もあれば、自分自身の目で見かけたこともある。しかしもうずっと、パッタリと噂を聞かなくなった」
都市伝説でもなんでもないよ。
零はもう死んだの。
ずっとずっと前に、零はとっくに死んでるの。
『…ロヴロさん、その人の話は一般の中学生に聞かせるような話じゃないと思います。私もよく知ってる…零はもう、この世にいない。彼女はとっくに、死んでます』
「!…確かに君の言う通りだ。中学生に聞かせるには少々酷な話………しかし君は、彼女を知っているというのか?彼女が活動をしていたのは、まだまだ君の幼い頃の話だろう」
『彼女の事なら私が一番よく分かってます、ずっと一緒にいましたから…零は死んだんです。もう、それでいいでしょう?』
ロヴロさんは目を細めて私を見て、皆は私とロヴロさんの間に流れる空気に視線を集める。
「成程…ずっと一緒にいた、というのは……姉妹か親子か何かなのかね。君を初めて見た時から薄々思ってはいたが、どうにも雰囲気が酷似している。その髪にその目、その肌の色…どれをとっても彼女を彷彿とさせるものばかりだ」
ただあまりにも年が離れているように見えるがな、と言ったロヴロさんの発言に周囲がざわめく。
まだ幼く見えるが、どこをどう見ても瓜二つ…ロヴロさんは私を見た瞬間から、零の血縁者ではないのかと思っていたらしい。
『私には血縁者はいません。彼女は私の姉でも母親なんてものでもない…ただ、ずっと一緒にいただけです。似たもの同士だっただけで、一緒にいただけで、それ以外には何も無い…変な事を言ったら怒りますよ。私の家族は唯一中也さん…ただ一人、彼だけです』
「…もう少し聞きたいことはあるが、仕方ない。君が言うのなら彼女はもう死んだのだろう」
