第6章 あたたかい場所
今日は南の島での暗殺計画の大詰め…ロヴロさんも来てくれて、カルマ君は明日からの用意のために家に帰る。
昨日の内に、私がたまに本気を出しても防御が間に合うようにまではなっていた。
中也さんが言うに、そのレベルにもなれば中也さんくらいの相手でも現れない限りは大丈夫だろうとの事。
私だって驚くくらいにカルマ君は飲み込みが良くて、やはり体術は得意分野なんだなと思ったくらいだ。
防御がここまで出来てれば、まず体術にやられることなんて早々ない。
本当に頼もしいくらいに、強くなってる。
「特別講師のロヴロさんだ」
烏間先生の一言に我に返って、ロヴロさんの方を向く。
しかしロヴロさんに見られてしまっては何かを見破られてしまいそうな気がして、しれっと目を逸らした。
カルマ君は皆に紛れて訓練してたり、時々どこかに姿を眩ませていたり…何にせよ、私は何も怪しまれてはいない。
平生を装って、遠目に皆の最終チェックをする。
ロヴロさんが皆の近くを回っているのを見て、特に誰にも問題がなさそうで安心した。
安心して、気が抜けた。
そんな瞬間に、ロヴロさんの声が、やけに直接脳に響いてきた。
「最高の殺し屋…そう呼べるのはこの地球上に二人」
その言葉にバッ、とそちらを振り向けば、潮田君がロヴロさんと話をしている。
ドクン、ドクンと胸が脈打つ。
「この業界にはよくある事だが、彼の本名は誰も知らない。ただ一言の仇名で呼ばれている…曰く、”死神”と」
潮田君も、それを聞いていた皆もゴクリと喉を鳴らすのが聞こえた。
「ありふれた仇名だろう?だが、死を扱う我々の業界で”死神”と言えば唯一絶対奴を指す。神出鬼没、冷酷無比、夥しい数の屍を積み上げ死そのものと呼ばれるに至った男。君達がこのまま殺しあぐねているのなら…いつかは奴が姿を現すだろう。ひょっとすると今でも、じっと機会を窺ってるかもしれないな」
「奴って…さっきロヴロさん、二人って言いませんでした?」
潮田君の的確な返答に、嫌な汗が身体を伝った。
これはまだ、この教室の誰にだって言っていないことだ。
私が中也さんと出会う、もっともっと昔の話…ほんの一握りの人しか知らない、ずっとずっと“前”の話。
「もう一人はここ数年、もうずっとなりを潜めていてな。…“0”と呼ばれる女性だ。今は生きているのかさえ分かっていない」
