第6章 あたたかい場所
えへへ〜と気分良さげに中也さんに擦りついていると、中也さんは呆れたように私の頭を撫で始める。
「ったく、あーマジで死ぬかと思った…なんでいきなり突っ込んで来るかなお前は」
頗る機嫌の良さそうな私を見て、立原も広津さんも銀さんも…カルマ君もいつもの私を見るような目でこちらを見ている。
『そこに中也さんがいたから…アタッ』
「阿呆、それでもし俺が受け止めてなかったらどうなるか分かってんのかお前?」
軽く頭を小突かれて、見れば本当に心臓にきたのか、中也さんは口を引き攣らせていて眉をピクピクと動かしていた。
『中也さんなら大丈夫でしょう?』
「……そうだ、俺以外にんなことすんなよ、絶対ぇに」
中也さんが撫でるスピードを早めてそっぽを向く。
私の中ではそれだけでもかなりご満悦だ。
でも、数日間は我慢しなくちゃ。
中也さん症候群を発症して、万が一にでも口をすべらせたら、全部上手くいかなくなっちゃう。
自分の身は、自分で守るの。
ポートマフィアにも探偵社にも、負担にならないようにするの。
「その様子じゃあ楽しかったみたいだね、良かったよ。何か良いもの見つかった?」
帽子を買いに行っていたのをカルマ君はしっているから、私の様子を見てかそう問われる。
カルマ君あたりも警戒してたけど、これなら大丈夫かもしれない。
『すっごいよかったよ!早く中也さんに会いたくて焦っちゃった』
はしゃいでそんな言葉がスラスラと出てくる自分に嫌気がさす。
何が早く会いたかっただ、何なら今回の件に収拾がつくまで会いたくなんてなかったくらいなのに。
「あ?例の買い物とやらか?…んな急がなくても俺はどこにも逃げねえっつの」
『いっぱいいれたらいいんですもん。中也さんは来て欲しくなかった?』
「な、何だよ!んな事行ってねえだろ、好きなだけいろもう!!」
中也さんとこうしてるのが好き。
本当だよ、本当に大好きだよ。
そんな大好きな中也さんに嘘つくの、しんどいの。
中也さんを騙して、すらすらなんでも言葉が出てきたり、すぐに笑顔が作れちゃうの…中也さんでも見抜けない笑顔の作り方、分かっちゃったの。
『…うん、一生ね!』
「だから怖ぇってそれは…って、手前ら何見てやがる!?続きしとけ続き!!」
黒服さん達は慌てて訓練を再開して、それを横目に中也さんの胸に顔を埋めた。
