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第6章 あたたかい場所


家に戻ったら中也さんもカルマ君もいなくて、時間帯的にもまだ訓練中なのだろうと想像がつく。
自分の部屋のクローゼットの中にある、外から中身の見えない作りの棚の中に包まれた状態のまま帽子をしまい、クローゼットを閉める。

中也さんには、組合との件が片付いてから渡そう。
それこそ、沖縄から戻って色々とはっきりさせられる時に…どんな結果になったとしても、ちゃんと自分の思いと一緒に中也さんに届けよう。

だからこれも、まだ秘密だ。
私がいない時に中也さんに見られちゃったらプレゼントにならないから、沖縄の暗殺旅行にも持っていこう。

ふとそこで気がついた。

『沖縄に行くまで乗り切ったら、拠点を失った組合は私を大人数で追ってこれなくなる…?』

探偵社とポートマフィアとの三つ巴の戦いで、拠点の船もなしに沖縄になんて来る事はどう考えたって不可能だろう。
なんの利益もない。

あとほんの数日じゃないか。
それならきっと乗り切れる…やれる、大丈夫、ちゃんと警戒してれば大丈夫。

自信があるのか強がりなのかよく分からない言葉で、自分から焦りや動揺を漏らさないように…白石蝶を演じるために、自分を奥へ奥へと追いやって、扉を作る。

大丈夫だよ、ここを越えればもう中也さんがいる。
大好きな大好きな中也さんがいる。

好きって事だけ考えてればいい、それ以外のものなんて知らないふりをしてしまえばいい。

一つ息を吐いて、勢いよく扉を開き、扉の中に飛び込む。
越えた先は空中で、斜め下には中也さん…そして周りにはカルマ君や立原、広津さんに銀さんに黒服さん達。

皆気付いていなかったけれど、私の勢いと大きな声に、一瞬で私に視線が集まった。

『…中也さああん!!貴方の白石蝶ですよー!!!』

「!?ち、蝶!?お前またどっからき……ぐあっ…!!」

勢いをつけて中也さんに文字通りダイブして、中也さんは私を抱えたまま地面に倒れ込んだ。

あれ、流石に勢いつけすぎた?

「幹部!?」
「って、蝶ちゃん!?またすごい勢いで…」

『中也さん?…どうしました?私ですよ……って、わわっ!?』

ねえねえ、と反応を確かめるように中也さんの頬に手を当てれば、ムクッと中也さんは上体を起こして、私の体もグイッと起こさせる。

「っぐ、お前…、ま、マジで心臓に悪ぃ……どっか打ってねえか?」

『!…はい!大丈夫ですよ!』
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