第1章 蝶と白
教室の前に立ち、殺せんせーが扉を開ける。
「おはようございます皆さん!今日は、朝の暗殺は禁止です。既にメールで連絡が回っているかとは思いますが…」
歩く殺せんせーに着いて、教室に入る。
「おおお…」「わぁ…!」などと声が聞こえるが、とりあえずは自己紹介だ。
前に向き直って、名前を言う。
『白石 蝶です。漢字で蝶と書きますが、ちよと読みます。よろしくお願いします。』
一礼して、殺せんせーに指示された席へと向かう。
一番後ろだ。ある意味気楽かも。
私の隣は…赤髪の男の子。
「俺は赤羽 業。よろしくね、白石さん。」
随分とフランクな子だな。
でも、あまり深く関わるつもりはないので、とりあえず会釈だけで返しておく。
……この子、結構頭良さそう。そんな目をしてる。
色々感づかれそうだから注意しないと。
と考えてたのにも関わらず、殺せんせーは
「では、この時間は白石さんへの質問タイムとします!」
なんて言い出すから、無理矢理だけど皆と話さなければならなくなった。
すぐに皆集まってくる。
『…一応顔と名前は全員覚えてから来たので、自己紹介はなくても大丈夫です。』
赤羽くんにはもうされたけど仕方ないよね。
「凄いね、全員覚えてきたんだ!」
と話しかけてきたのは、潮田渚君。
そして、それに乗じて沢山の質問が浴びせられる。
「何でこんな時期に来たの?」「どこから来たんだ?」「趣味は!?」「彼氏いる?」等々…
『始業式に間に合わなかったのは、制服の発注ミスで届かなかったからで、神奈川県から来ました。趣味…は特になくて、彼氏もいないですよ。』
そう言うと、皆がそれぞれの反応を示した。
だが、そこでさらに質問を返してきた人が一人。
前原陽斗君…チャラ男、らしい。
この子からの質問は、私を動揺させるには十分なものだった。
「じゃあじゃあ!好きな人とかいんの!?」
作り笑いさえ浮かべられなかった。
好きな人……いいの?その人の事を思い浮かべても。
ダメだよ、忘れなきゃ。
『…内緒。』
精一杯微笑んで見せた。
ダメじゃないか、いないって言わなきゃ。
その後も質問は続く。
「ええ!じゃあいるかもってこと!?」
「あ、その髪の毛って地毛?まっ白!」
「目も不思議な色してるね!」
『髪も目も、生まれつきだよ。』