第6章 あたたかい場所
『それにトウェインさん、そんな事言って私の警戒心を高めていて、大丈夫なんですか?奇襲作戦が通用しにくくなるんですよ?』
「奇襲…ボスは君を、そんなものを使わずとも捕まえてしまうつもりだ。もうすぐ、こちらに来ている組合構成員全員で動く。汚い方法を使ってでも、君を奪いに来る」
今の組合は、そういう組織だよと言われ、トウェインさんの言わんとすることがわかった気がした。
私くらいなら、奇襲なんてしなくても捕まえられる。
私の力で、組合の構成員を…フランシスを相手にすることは、出来ない。
『探偵社やポートマフィアの誰かと、私が行動を共にしていたら?』
「それはない。君が普段一緒にいれない時間は把握済みだし、なによりもそうさせないように動くつもりだ」
『手、出すつもり?』
直接手は出さないよ、とだけ言って、頭に柔らかく手を置かれる。
「…僕もこれ、一応ちょっと情報漏らしてるわけだからそろそろ帰るね。とりあえず蝶ちゃんにはそれだけどうしても伝えたかったから」
『ま、待って!』
手を離して後ろを向くトウェインさんの服の裾を、咄嗟に握る。
「蝶、ちゃん…?」
『あ、その…あり、がとう。捕まるつもりは無い…けど、私の事を思って言いに来てくれて、ありがとう』
目を見開くトウェインさんの目を見て伝える。
彼のこれは、本人の中でも少し思うところがあるくらいには…組合側からしてみれば少し情報を漏らしてしまったような、裏切り行為にも近いような事だ。
そんな事をしてまで中也さんと後悔しないように過ごしてだなんて、どこまで私の事を考えているんだこの人は。
「……プッ、本当に律儀!こっちこそ、逃がすつもりは無いよ。まあ僕はやり方には反対だけど、蝶ちゃんに来て欲しいし…じゃ、次会うときは、お互い本気だからね」
『はい…トウェインさんって、悪にはなりきれそうにないいい人だよね』
「な、何いきなり!?褒めても何も出ないよ!?」
満更でもなく照れている。
しかし私は、本当に心の底からそう思うのだ。
『うん、やっぱり。私からしてみたら組合の皆さん、ただの悪い人じゃないんだもの…………ちゃんと、何かの為に動いてる。私なんかとは全然、違う』
「……これだけ、ごめんね」
ギュ、とトウェインさんに包まれる。
『!…仕方ないですね』
やっぱりお人好しだよ、トウェインさん。
