第2章 暗闇の中で
先程の痛みはまだ鮮明に覚えているが、これから京都探索という事で、殺せんせーの暗殺を同時に行わなければならない。
弱ってなんかいられない。
忘れるようにと気合を入れて、自らの両頬を手で刺激した。
旅館の外に出て、班別に行動を開始する。
もう他の班の皆の姿は見えない。
ここで、当初の私の仕事を思い出す。
殺せんせーが他のところは回ってくれるんだし、この班は私がしっかりしなきゃ…
さっきスカートを捲った時に銃を見ていた烏間先生から、一応一般の修学旅行を送ってくれということで、銃は持参しないように言われた。
更には、武装探偵社の体裁を考えると能力を誰かに見せない方がいい。
つまり丸腰状態の今、頼りになるのは体術のみ。
能力でカバーできないところも出てくるだろうから、ちゃんと周りを見ながら行動しないと。
「ついた、ここよ。」
神崎ちゃんの声で皆は指さされた方向を見る。
『……ここは、祇園?』
「へえ、祇園ってこんなところもあったんだ!」
神崎ちゃん曰く、予約がないと入れないような高級店が多くあるため、人も通らず薄暗い細い路地になっているんだとか。
「ここなら、殺せんせーの暗殺にピッタリなんじゃないかって思って!」
確かに、雇われたスナイパーさんの射線さえ通れば、殺せんせーに当たるかもね。
のんきに考えてる内に、何かの気配に気がついた。
カルマ君にアイコンタクトで警戒するよう促す。
彼に前列を任せ、私は最後列へと回った。
「ホンッと、ピッタリ計画通りだわ。何でこんな拉致りやすい場所通るかねぇ、?」
出てきたのは、予想の人数をはるかに上回る高校生の集団。
嫌な笑みを浮かべてニヤニヤしている目の前の人物達に、嫌悪感を覚えた。
「何?お兄さんら…観光が目的っぽくないんだけど。」
「男に用はねぇ、女おいてさっさと帰り…ガ、!!?」
驚いて前列側を見てみると、相手の一人を倒していたカルマ君。
結構やるじゃん。
「ほらね渚君、目撃者がいないところだと喧嘩し放題だよ?」
「!!この、…やっちまえ!!こっちは刃物持ってんだよ、!」
ナイフを振りかざして向かう不良を相手にたやすく倒したカルマ君を横目に、後列側の不良は私が倒していく。
「この女…ヴ、!?」
しかし私は、カルマ君が普通の中学生よりも喧嘩が強いってことに、油断しきっていた。