第6章 あたたかい場所
「あ?何かすっげえ俺好みの絶叫が聴こえるんだが、まさかそこに蝶いんのか?」
「あ、正解正解。電話スピーカーにしてるからすっごい挙動不審になってる」
スピーカーになってるからと言えば少しでも中也さんがびっくりするかと思ったのに、電話から聞こえた声はそうか、とあっさりとした一言だけだった。
てかなに、俺好みの絶叫とか知らないよ!?
中也さんもしかして他の人の前でそんな事ばっか言ってんの!?
「まあ俺も、寝るタイミングに驚かされたよ。まさかキスしただけで気絶すっとは思ってなかったからな」
『…………あ。…あああああ!!!』
数秒の沈黙があって、カルマ君はもうそろそろ慣れたのか、ああ成程なんて納得の声をあげている。
しかし烏間先生にまでバレてしまった。
キスだけで気絶しただなんて、深い方をしてたって公言してるようなものじゃない!?
『やだなに中也さんのバカ!!バカ、ホントもうバカァ!!』
烏間先生の背中に泣きつきながら煩いくらいに中也さんへの悪口を喚き散らす。
「なんかすっげえバカバカ聞こえんだが…今回相当恥ずかしかったんだな蝶の奴」
「中也さんとこの可愛い蝶ちゃんが照れすぎて他の男の人に泣きついてるよ?いいの中也さん?」
「ああ!!?何つった今!?おい蝶、お前いったい誰にくっついてやがる!!?」
『何言ってんのよカルマ君!!?誤解させるようなこと言わないで!!私は中也さん一筋だか……ら…ッ?』
中也さんの声とまた見事に被ったのだけれど、私の方が若干長かった。
しかもさっきバカバカ言ってたのが聞こえてたのなら、こんな大声聴こえていないわけがない。
「……蝶、お前そこにいるな?いるんだな?なんか嬉しい事言ってくれてんのは分かったが、誰にくっついてるお前。今度そいつ連れてこい」
『え、中也さん!?…か、烏間先生だから!!本当、何誤解させるようなこと言ってるのよカルマ君!!』
烏間先生の顔が引きつっている。
カルマ君に至ってはしてやったり顔で、予想通りとでも言うような笑顔を浮かべている。
「…烏間さんか、まあそこなら安心……あ、烏間さん!うちの蝶が可愛くてもそっちに嫁にはやらねえからな!?手ぇ出す輩がいれば俺がすぐに制裁しに行くから肝に銘じといてくれよ!!あとあんまくっつかないでくれ、そいつ俺のだから!!」
何言ってんのあの人はあああ!!!?
