第6章 あたたかい場所
中也さん症候群を発症した状態のまんま私の看病道具を中也さんと一緒に片付けて、首領に一言御礼だけ言って椚ヶ丘へ戻ってきた。
幸せな気分のまま学校に戻ってきたため、表情筋が機能してくれない。
もうちょっと仕事して。
「長かったねー蝶ちゃん…その感じはいい事あった?」
またまた食べ損ねたお弁当を教室で食べていると、カルマ君が私が戻ったのを察知してかサボりでか、教室に入ってきた。
それに合わせて烏間先生も入ってくる。
「白石さん、体調の方は?中原さんに上手く寝かしておいたからと聞いていたんだが…」
うまく寝かしておいた、それはつまり私を寝かせるために動いていたという事。
あの人はどうせまた、私が辛いままなのが嫌だからとかなんとか考えていたのだろう。
……うまく寝かせておいた?
『…!?ゲホッ、ゲホッ!!ケホッ…!!』
思い出してブワッと顔に熱が集中し、数秒遅れて食べかけていたご飯が変な所に入って噎せ返る。
烏間先生は大丈夫か!?と背中をさすってくれるのだが、それさえもが先程までの事を思い出させる行為となって、余計に私を恥ずかしくする。
「へえ…これはちょっと真相を確かめる必要があるね」
私が呼吸を整える前にカルマ君は突然携帯を取り出して、電話をかける。
そして何故かスピーカーにしたのか、通話が始まる音が聞こえた。
「あ、出てくれた。もしもし?俺なんだけどさ、中也さんまた蝶ちゃんに手ぇ出したでしょ」
「『ブッ!!?』」
カルマ君の台詞にまた噎せ返ったけれど、烏間先生までもがその発言に動揺して手をピクッとさせて止めてしまう。
中也さんと同じタイミングで吹き出した。
「人聞き悪ぃ言い回しばっかしてんじゃねえぞ手前!?……まあ、好きなだけ可愛がってはやったがな。そっち行く時また持病のスイッチ入ってたが、そろそろおもしれえくらいに挙動不審になってんじゃねえか?」
『なっ、なんてこと言うのあの人!!?』
「手を出され…し、白石さん?もしかして中原さんに手をあげられたのか?」
『ち、違います!中也さんが私にそんなことするはずがないでしょう!!?……あああああ!もう聞かないで烏間先生!!』
「あ、ああ?何もされていないのならいいんだが」
烏間先生がちゃんと分かっていないからこっちの心臓に悪すぎる。
何か言う度に惚気とボロが出てる、おそろしい。
