第6章 あたたかい場所
「つってもそうなんだから仕方ねえだろ?…まあ何にせよ、暴走だかなんだかが止まってよかったよ。いくらお前といえども、身体の内と外がそんだけ温度差あったんならどうなってたか分かんねえし」
背中を数回撫でてから、中也さんが離れる。
『中也さんが治してくれたの…』
キュ、と中也さんのシャツの裾を掴んで、下を向く。
中也さんの処置のおかげで、身体だってもうだいぶ楽。
だけど、くっついている状態からいきなりすっと離れられると…私の身体はたまらなく切なくなってしまう。
「原因も俺みたいだけどな。…それに、寝れなくなっちまうくれえに俺の事考えて、恥ずかしくなってたんだろ?」
『っ!……ね、寝る前にあんなのするからッ』
「お前がされるの好きなのかと思ったからなぁ…ちょっと俺がくっついて離れただけでそんな顔してよ」
左頬に手を当てられてピクリと肩に力を入れる。
中也さんの方に顔を向けられるも、やっぱり恥ずかしくて目を背ける。
『か、確信犯…っ……ね、離しちゃやだっ…』
「おーおー、えらく素直だな本当に。まさかまたスイッチ入ったか」
『そんなのいいの……中也さん、早く…っ』
シャツを握る手に力が入って、たまらなくなって中也さんの目をを見つめる。
私のわがままはわがままのうちにも入らないような可愛いものだとこの人は言うけれど、私の中で一番のわがままはいつだって中也さんだ。
そしてそれはいつどんな時だって私の中では絶対で、叶わなかったら切なくて切なくてたまらない。
こんなに厄介なわがまま、普通はない。
「はいはい…これで満足ですか蝶さんよ」
さっきよりも強くギュッとしてくれて、私も抱きしめ返して中也さんのぬくもりを感じる。
『ん…中也さん、私こうしてたらあったかいの。中也さんとこうしてたらね、心の底からあったかくなるの』
「俺と?……そうか、お前もか。俺も蝶とこうしてると、あったけえよ」
『!本当?』
「本当だ」
中也さんからそんな風に返されるだなんて思っていなかった。
そっか、中也さんもあったかくなってくれてたんだ。
『もうちょっとこうしとく』
「どうせまた長ぇんだろ?こっから…どうせ体調悪ぃんだ、好きなだけくっついてろよ」
『…はいっ』
チュ、と中也さんのほっぺにキスをして、彼の胸に顔を埋めた。
「やってくれやがるぜ…容赦ねえな……」
