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第6章 あたたかい場所


背中を摩られて呼吸を整えれば、中也さんに乾いたタオルを渡される。

「ほら、これ使え。持ってきたけどまだ使ってねえやつだから」

『ん、っ…』

「電話してカルマに聞いてみれば判断力がかなり鈍ってたって聞いたが…寒気がなくなって力の調節が難しくなってきたか」

中也さんがペットボトルを持ってくれたので、両手で口や首元に垂れた分をタオルで拭きながら、顔をそこに埋めた。

『飲める…飲め、ます…ちょっと傾けすぎたの』

「……手どけろ。飲ませるから」

飲ませると聞いてドキリとしたけれど、中也さんに言われてしまっては従う他に選択肢がない。

恐る恐る中也さんの方を向けば、片手にペットボトルを持った状態で私の後頭部に手を優しく回す。

「んで、ちょっとだけ上向け…そうだ。少しずつ飲ませんぞ」

ちょっとずつ、本当にちょっとずつ、口の中に注がれる。
中也さんにされているって考えるだけでもドキドキして、手をソファにグッと押し付けて羞恥に耐える。

少し飲んだらちょっと間をおいて、またちょっとずつ飲んで…それを繰り返して、ペットボトルの中身が三分の一くらいになったところで中也さんは飲ませるのをやめ、頭をよしよしと撫でてくれた。

「いい子だ、よく飲んだ……良かったよ飲んでくれて。これで水分補給してくれなかったらどうしようかと思ってた」

『…飲むよ、中也さんがしてくれたんだもん』

「そうか…でも熱中症になった時に飲めないのを我慢して、無理矢理飲もうとすんのはやめとけよ。気道に入ったら危ねぇから……つかもう熱中症になるな、寒かろうとなんだろうと水分取れ」

どうして中也さんが私よりも熱中症に関する知識を持っているんだろう。
仕事上、何らかの応急処置なんかは覚えていたって不思議じゃないけれど、熱中症の対処を中也さんが詳しく知っているというのは初耳だ。

『ん、はい……中也さん、何でそんなに詳しいの?私、熱中症にそこまで詳しくないのに』

「そんなもん、お前がこんな事になったら困るから俺が昔から調べて……し、調べてただけだよ!何か悪いか!?」

恥ずかしくなったのか勢いよくそっぽを向いてしまった中也さんの耳が赤い。
そっか、中也さん親バカだもんね。

『ううん、嬉しいよ…私の専属のお医者さんは中也さんだね。何でも治してくれちゃう』

「!…言ってろ」

再び頭を撫でられた。
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