第6章 あたたかい場所
『二時間半くらいって、そんな時間私ここに居たんですか!?中也さんに連絡までしてもらって、看病させて?…二時間半も!?』
「看病っつったってタオルと枕の交換とか汗拭いたのとか、空調調節してた位だぞ?そんなもんに気遣うなって」
『だ、だって結局私何もしてないんじゃっ…』
二時間半、寝てただけ。
結局、文字通り中也さんが、全部何とかしてくれた。
こんなに情けないことがあるだろうか。
それに寝てただけだなんて…
『…二時間半も中也さんとくっつくチャンス逃してた』
「おい、声に出てんぞ」
『いタッ…』
おでこを指で小突かれて、手加減されてたからそんなに痛くはなかったのだけれど、反射的にそこを擦る。
『だ、だって折角ここにいたのに勿体ない…』
「俺にとっちゃあ可愛かったもんだぜ?ずっとお前の寝顔を眺められるし」
『へあっ!!?な、なななっ、なんて事…!?』
そうか、それだけここで寝てたんなら中也さんに寝顔なんて見られ放題…変な顔してたよね絶対!?
可愛かったもんだって何!?中也さんってやっぱり親バカなの!?
「最初首領を呼びに行く時なんか全然手ぇ離さなかったしな。蝶が離してくれるの待ちながら烏間さんに連絡入れたが、結局最終的にキスして抱きしめて、頭撫でたら離してくれたよ」
『寝てる女の子になんて事してるんですか中也さん!!?』
ははっと笑う彼からは悪気なんてものを微塵も感じない。
寧ろどこか嬉しそう。
「でも嫌じゃねえだろ。…んで、とりあえず水分補給しろ。お前今日学校で水分取ってなかったんだろ?流石に俺とキスした時の唾液だけじゃあ水分補給には無理が『ストップ、ストップ!!分かったから言わないでっ』…本当、いい反応してくれる」
クックッ、と喉を鳴らして笑う中也さんにむくれながらも、そこに置かれているスポーツドリンクのペットボトルを手に取る。
……しかし、どうにも開かない。
手に上手く力が入っていない…?
見かねた中也さんが貸してみろ、と言って蓋を開けてくれ、私に返してくれた。
『……ありがとうございます…………ッ、んっ…!?』
「蝶!?」
いきなり傾けすぎたのか、一気に口の中に入ってきたのにびっくりして、飲んだはいいものの口からこぼしてしまった。
中也さんが見てるところでなんて事してるの私、と思いつつも噎せてしまってそれを拭えない。
