第6章 あたたかい場所
真夏日の爽やかだけれども温い風が、窓から柔らかく吹き込んでくる。
暑すぎず、丁度心地いい気温だ。
『…ねえカルマ君、布団被っちゃ「ダメ」ですよね』
言い切る前に制されて、身体が芯から温まらないどうしようもない感覚に、ただ冷や汗をたらりと流す事しかできなかった。
「熱中症の疑いが無かったらいいんだけどね…今日何で昨日見たいに水分補給ちゃんとしなかったの?」
私に背を向けて作業をするカルマ君。
氷枕用の袋をいくつか用意しているようだ。
『あんまり暑くなかったから?…顔とか熱いの、恥ずかしいせいだと思ってたからさ』
ボソリと小さい声で言えば、それ以上蒸し返して私を恥ずかしくさせるような返しはされなかった。
「身体の内側が寒いってのがまた厄介だね、恥ずかしいのは何となく予想ついてたけど。半分中也さんのせいみたいなもんか」
『ち、中也さんのせいじゃない!!……多分』
「泣いたのも死ぬ程恥ずかしくされたのも、それで寝れなかったのも中也さんのせいでしょ。本当…まあ能力が軽く暴走しちゃってると仮定して、前は自分の事攻撃してたんでしょ?今回のもまた厄介だね」
カルマ君には前に能力が暴走した日の事をちゃんと説明してある。
まあ制服とか切れてボロくなってた時点で、それを見られちゃったわけだから言わないのも変だし…
『厄介…中也さんにも言えないし余計に厄介』
前の時に関してだってそうだ。
あの時は気が動転してて精神状態がおかしくなっててあんな事になっちゃったわけだけど、今回のはまたわけが違う。
本当に能力の暴走なのであれば、私が失っているものは体温。
それも、血液の流れや摩擦熱などがあっても関わりなく、“熱そのものが”失われている。
でも肌の表面がこんなに熱いわけだから、そこで何とか留まっているのかもしれない。
それか、その代わりに外の熱をそこに集中させて得ようとしているのか。
私の能力はあくまでも色々なものを媒介させる事。
消えたものは、必ず何らかの形のものと交換されて移動して…移し替えられているだけだ。
だからカルマ君の言う可能性は、自分の中では物凄く納得のいくものなのだけれど。
「…言っちゃえばいいんじゃない?」
『へ?……わわっ!?何っ…』
突然頬に当てられたのは、少し温かい水の入れられた袋だった。
氷枕用だけど…ゆたんぽ代わり、なのかな。
