第6章 あたたかい場所
風邪をひいたとか熱だとかとは考えにくい。
何故なら、おかしいのは身体の温度だから。
軽い熱中症も本当になっている可能性はあるのだが、それにしても身体の外側と内側との温度の差が開きすぎてる。
普通に考えて人間の身体でそんな状態になってしまってはどうなるのか、予想もつかないが…私の体質故に体温の変化と気分の悪さくらいでおさまっているのだろう。
『ちっちゃい頃にもあった気がするの。中也さんを本気で怒らせちゃってすっごい泣いて、私自身泣き虫な方かもしれないんだけどいっぱいいっぱい泣いちゃった日があった』
その次の日にも、確かこんな風にすこぶる体調が悪くなった。
その時の件に関しては中也さんもまだ私くらいの年だったという事もあって中々素直にお互い話せなくって、結局首領に診てもらってもよく分からないという結論にしか至らなかったのだけれど。
『で、それの次の日にも確かに身体がおかしくなったの。なんなんだろ、反動というか…使ってるわけじゃないんだけど能力使って何かを移し替えてるような?』
「要するにかなり取り乱してるって事が共通してるから、軽くまた能力が暴走しちゃってるのかもね」
ぽろっと漏らしたカルマ君の言葉は、びっくりするほどスッと胸に入ってきた。
『……おか、しいな…私やっぱり人間じゃないのかも』
「馬鹿な事言ったら怒るよ蝶ちゃん…誰がなんと言おうと、蝶ちゃんがそう思おうと蝶ちゃんは蝶ちゃんだ。白石蝶は、ちゃんと意思や感情を持って動く女の子だ」
『…ん』
カルマ君のそういうところ、ずるいなぁ。
いつもからかってばかりのくせして、私が本当に弱ってる時、絶対頼りになりにきてくれるんだから。
保健室の寝台に寝かされて、冷やすからと言って保冷剤を用意される。
しかし身体の中が寒くて寒くて仕方の無い私は、無意識に首を横に振っていた。
「…何で?あついままじゃ辛いでしょ」
『身体の外はすっごくあついの。でも、中が寒くて仕方なくって…カルマ君に気付かれるまで身体がおかしいって分からなかったから、なんか余計に頭気持ち悪い』
保冷剤をしまって、代わりにとカルマ君はペットボトルを持ってきた。
「これ、常温…っつーよりこの暑さのせいで温くなってるから。それなら丁度いい温度じゃない?」
『わっ…、本当だ。………あったかい』
「ちょっと待ってて、風通すから」
