第6章 あたたかい場所
『待っ…て、私寝不足なだけだよ?訓練、止めちゃったし早く…』
「その状態で外にいるのは危険だ!俺が保健室に連れて行くから、皆ナイフの訓練を続けていてくれ!」
烏間先生に必死に言われて何も言えなくなって、大人しく口をつぐんだ。
「………この辺東京の中でも暑いし、慣れてなかったらしんどいはずだよ。蝶ちゃん水分補給とか昨日は結構気遣ってたけど、今日睡眠不足で頭回ってなかったっしょ」
『…そっか、ここ横浜じゃないんだ』
この夏、初めて中也さんのいない所でも夏を過ごしているんだ。
ダメだなあ、中也さんがいなくなった途端にすぐこれだ。
『でもこれ、熱っていうより恥ずかしくて顔熱いだけなんじゃ…』
「俺も最初それで赤いのかと思ってたけど、完全に熱いから。…烏間先生訓練続けててよ、俺行くから」
カルマ君が烏間先生の方を振り向いてそう言えば、烏間先生はカルマ君が事情を少し知っているのであろうことを察したのか、少ししてから俺も行くからと了承した。
「はーい、じゃあ行こっか蝶ちゃん。立って歩けそう?」
『う、うん。流石にさっきまで訓練だってしてたんだから…あれ……?』
一度身体が熱中症であると意識すると、さっきまでは感じていなかった程の悪寒が漂い始める。
何これ、立ち上がる力入んないし、体の表面は熱いのに…中が、寒い。
その気持ち悪さに頭が寝不足とあいまって更にガンガンと悲鳴をあげる。
「蝶ちゃん…ねえ、それ熱中症と寝不足なだけ?他に何かない?」
カルマ君が私と目線を合わせるようしゃがみ込んで顔をズイッと寄せる。
『と、特に何もない…はず』
熱のような気はするけれど、熱中症でそうなっているだけなはず…と思いたいのだけれど、この感覚は初めて感じる感覚だ。
勿論熱中症だって以前になった事は無いのだが、これは何というかただ身体に現れた症状というわけではない感覚で…
『…………っ!…カルマ君ごめん、ありがとう』
カルマ君が私を背中に背負って校舎に向かう。
「ううん。その顔、何か思い当たる節でもあったの?」
人がだいぶ遠くになったのを確認して、ただの仮説でしかないのだけれど、口に出す。
『う、ん…前にも似たような事何回かあったし、私の体質なら可能性あるからなんだけど。………昨日泣きすぎたせいか恥ずかしすぎたせいか、それで体温がおかしくなってるんだと思う』
