第6章 あたたかい場所
「!白石!?」
「おい!?ナイフ当たって、ねえよな…?」
音を立てて地面に倒れ込んでしまった。
足に力が入らなくなって、頭も身体もグラってして、わけもわからないうちに…気がついた時には、全身を地面に叩きつけた痛みが私を襲っていた。
『……っあ…………っ!ごめんなさい、ちょっとボーッとしてただけで…すぐ再開する「待て待て待て!!」…何っ?』
私が地面に腰をつけたままでいると、やはりと言うべきか、訓練がピタリと止まってしまって、皆が私の方を見て動揺していた。
近くで見ていたから尚更なのだろうか、寺坂君が私が再開させようとするのを制する。
「何じゃねえよ!どう見たって今の、足がもつれて転んだとかじゃねえだろ!?」
烏間先生が私の元に走り寄ってきて目の前でしゃがみ込み、顔を覗き込む。
「……白石さん、もしかして昨日、あまりよく眠れていなかったのか?」
図星すぎて何も言えなくなって、胸がまた煩くなる。
折角夜中中を通しておさめてきたのに、恥ずかしさが蘇る上に自分のこんなしょうもない事で皆の訓練を止めてしまった罪悪感が募る。
朝から私の様子を注意深く観察して目線を向けていたカルマ君もこちらに近寄って、何かを察したような表情を私に向けた。
それだけでもバレた…いや、バレていたのが私にも勿論伝わって、腕で顔を隠してカルマ君から逸らす。
熱が更に顔に集中してきて、ついつい唇を緩く噛んだ。
『…ごめんなさい烏間先生、ただの私の努力不足なんで……』
「蝶ちゃんのせいっていうか中也さんのせいじゃね?」
『か、カルマ君!!?……あっ…な、何でもない!!』
ニヤニヤと笑みを浮かべて、強がる私の頭に手を置く。
「俺はちゃーんと分かってるから……?蝶ちゃん、ちょっと腕退けて」
『な、何で?今顔あんまり見せたくな…ひゃ、っ!?』
スルリと頬のところまでカルマ君の手が滑り込んできて、何本かの指先が首に触れて肩を跳ねさせる。
普段のカルマ君ならそれでさえも楽しそうにしてくるはずなのに、今はただ真剣な目で私を見ていた。
「…………烏間先生、蝶ちゃん校舎に運んだ方がいいかもしんない。多分熱ある。軽く熱中症なってるかも」
「本当か!?」
『っ…?』
熱中症…誰でも知ってるその症状。
私が、熱中症……?
火照る身体で浅く息をしながら、二人の会話をただ聞いていた。
