第2章 暗闇の中で
「…分かったよ、どうにかしてあってみる。蝶の為だ、仕方ねぇ。」
ようやく聞き出せた合意の言葉に、ポートマフィア一行も赤羽も安堵した。
「じゃあ、大まかに説明するよ?」
そう言って、京都に着いてからの行動ルートや宿泊所の事など、修学旅行での班の詳しいスケジュールを説明していく。
そして、それをメモするため、再び森から無線機を受け取った中原。
鈍感な割に蝶の事となると本当にちゃっかりしてるなぁ、と森や部下から見つめられる。
「ざっと、こんな感じかな?一応、旅館での相部屋は女の先生一人とになってて、いつでも能力が使える状態らしいし、なんなら夜に外に出るよう伝えてもいいけど…どうする?」
「夜は俺もどうなるか分からねぇから、まだ何とも言えねぇな。一応、班別行動の時に接触を図ろう。あとは手前が何とかしてくれんだろ?」
「うん、了解。じゃあ、途中で何とか蝶ちゃん一人にするから、その隙に会ってあげて。」
「話が早くて助かる。…夜にどうするかはその時にでも手前に伝える。信用してもいいんだろ?」
勿論、と素直に答えた様子の赤羽。
中原は、蝶の事でここまで行動を起こそうとする赤羽に少しの好感を持った。
森もそれは同じだったようで、「こんな子いたんならぜひうちにほしいくらいだ」と頭の回転の速さまで賞賛している。
新幹線の中では、丁度その時アナウンスが流れ、無線機を通じてそれが中原達にも伝わった。
もうすぐ、京都の駅に到着するそうだ。
「じゃあ、そろそろ着くみたいだし、この無線機蝶ちゃんに返すから。会えるのを楽しみにしてるよ、中也さん。無線機は蝶ちゃんに返しとくから。」
「すまねぇな、色々と……頼んだぞ。」
「任せて。また後でね。」
中原は通信機能をOFFにして、無線機をしばらくの間見つめていた。
『あ、カルマ君。もうすぐ着くって。』
「うん、それで戻ってきた。それとこれ…落ちてたから拾ってきたよ。太宰さんに渡されてたんでしょ?ちゃんと持ってなよね。」
『え、本当だ。ありがとう、気をつけるね。』
「絶対手放しちゃだめだよ?」
赤羽の念押しは、中原と確実に会わせるためのものだ。
『う、うん?まあ太宰さんが渡すものだし何か意味はあるんだろうけど…もうなくさないよ。』
「よし。…京都、楽しみだね。」
再びアナウンスが流れ、新幹線は停車した。