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第6章 あたたかい場所


『き、切り替え早すぎ!わざとなの!?ねえ!!』

「……いや、たまたまだ。だが結果オーライだったな」

ニヤリと、全然効いてねえぞという顔をする中也さんに、照れと恥ずかしさとヤケと悔しさを込めていっぱいいっぱい色んなところにデコピンをする。

「はは!俺が相手で残念だったな蝶」

『馬鹿!馬鹿馬鹿!!』

「何、明らかデコピンの音じゃないんだけど俺の感覚がおかしいのかな」

全然効かない中也さんに一度デコピンをやめ、乙女の心を弄んだ制裁だと言わんばかりの目を向けてタックルする。

それも勿論軽々と、それも実際はかなりの鈍い音が響いていたはずなのにぽふ、と受け止められたのだけれど、中也さんは何故かぐっ、と何かを耐えるような声を漏らした。

「え、今の音何、タックルの音じゃなかったよね絶対」

『タックルだもん…中也さん?』

「……わ、悪い…俺んとこにしがみつきに来たのに見惚れてつい」

予想とは裏腹な言葉を返され、私もカルマ君もあ、ダメだこの人、という目を向ける。

そしてそこから、それならちょっと恥ずかしいけどと悪戯心を震わせて、中也さんから一旦腕を離した。

「お、もう終わりか?まだいてくれても良かったんだが……」

『…………私からの愛ですよっ』

「おおっ、そう来たか」

カルマ君は意外そうな声をあげているが、声は何だか楽しそうだ。

少しジャンプして中也さんの首元に腕を絡ませて、何とかそこに届くようつま先立ちで着地する。
中也さんみたいにしたいからといって出来るほどのメンタルは持ち合わせてはいないためキスはしなかったけれど、私にしてみたら愛ですよだなんて言うだけ頑張った方だと思う。

『こ、これなら中也さんだって予想してなかったでしょ?ふふ、私の勝ち……っきゃ、!?や、何っ…!』

少し身体を屈めて暫くフリーズしていた中也さんだけど、すぐに私をひょいっと抱え上げて目線を合わせる。

結局浮遊感が怖くて中也さんの首元に思わずギュッと抱きついたのだが、それに彼は満足そうに笑った。

「はっ、悪いが俺にとっちゃ大好物だ。…カルマ、デザート持ってこい、このまま蝶に食わせる」

『へっ!!?こ、このままって、中也さっ…』

「はいよー、俺もう寝させてもらうし、俺の見えないところでベタベタしててよね。おやすみ〜」

カルマ君は悪魔のような笑顔を浮かべて去ってしまった。
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