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第6章 あたたかい場所


カルマの指導を終えてから、約束通り蝶と一対一の実戦を開始した。

「……赤羽君との実戦を見ていてなんとなく予想はしていたが、やはり成長具合が素晴らしい」

「蝶ちゃん、銃が一番得意なんじゃ…」

「昨日のビンタで威力が凄いのは知ってたがスピードも…つかあいつが能力使って体術を本気で扱うとあんな事になんのか!?聞いてねえぞ!!」

「いや、何あれ。マジで聞いてないんだけど?…能力も相まって全っ然目で追いきれねえわ」

周りのぼやきに集中力を割ける程の余裕も無いくらいに、蝶がテレポートを使うと隙が無い。
隙がないどころか攻撃に絶え間もなければ攻撃しても当たらねえし、位置を先読みしたところで瞬時に方向を切り替えられて移動される。

こいつ、ちょっとばかり成長しすぎなんじゃねえか?
さては俺が見てねえ半年間、どっかで身体酷使したなこいつは…

勿論俺自身も蝶の攻撃を避け続けてはいるし捌いて捕まえようともするが…結局はテレポートで逃げられる。

本気でやる気になってる蝶が一対一になって集中しきっている時に能力まで使おうものなら、それこそ俺以上のレベルの体術使いでもらなけりゃすぐにゲームオーバーだ。

「っ、と…」

俺が蝶を追い詰めたら壁を使うもなにも、まるで追い詰められる気がしねえ。

まあこいつの動きの癖や手筋や間合いは、皮肉な事にも糞太宰と相棒を組んでいた以上に長い間見てきていたから、全く予測がつかないわけでもないのだが。

『……っ!』

「うおっ!?…っぶねぇ!!」

何が弱いだ、弱いどころかやっぱり強くなってんじゃねえか。

声をこんな風に時折出すくらいに…感情がそこまで高ぶるくらいに、唯一全力で戦える蝶との実戦は楽しいものだ。
喧嘩好きの俺にとっちゃあ滅多にいない強者だからな。

異能力を使って少しだけ重力を操作し、自分のスピードを強化して蝶の瞬間移動に対抗し始めれば、蝶の顔に少し余裕が無くなる。

ちょこちょこ俺自身を移動させる事も多くなってきたため、自分と蝶の重量を大きくしてやれば、蝶の動きにもムラが生まれ始めた。

俺はそのまま蝶の方に向かっていって、蝶が思わず目を瞑ってその場で硬直した瞬間に腕を出す。

『……ん、っ____!?』

最初は殴りかかりかけたが、そんな事よりも今日禁止を食らった蝶へのキスがしたかった。
少々強引ではあるが、これで俺の勝ちだ。
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