第6章 あたたかい場所
それから何度も何度も、カルマの防御した部分の調子が悪くなってねえかを確認しながら、蝶の速さに慣れさせる。
蝶はまだあまり調子が乗らないらしいが、カルマは段々と目に身体が追いつくようになってきた。
流石に一回目は予想以上でダメだったが、四、五回目あたりからは二回三回と、着々と蝶の攻撃を捌く分には耐えられるようになっていた。
流石に全てが捌けるわけではなくて、慣れてきたといっても蝶はやはり速い。
どちらかといえばまだまだ受けるだけでもやっとの事の方が目に見えて多い上、捌けないということはそれだけやはり膝をついている。
蝶の方も感覚を取り戻しつつあるのか、寧ろ最初の方よりも動きが少しだけ早くなったような気がするくらいだ。
「……っ、…………ぐっ…!!」
「………そこまでだ、今日はこの辺で終わる。カルマは念入りにストレッチをしておけ、出来ればマッサージもしておいた方がいい。…どうだ、蝶は強かったろ」
「ははっ、分かってたつもりだったけど凄すぎるわ…どっからあんな力が出んのか不思議だよ」
カルマは清々しいくらいに笑って答える。
大したメンタルも持ってやがる…俺の直属の部下に欲しいくらいの人材だ。
「んで、俺はまあ順調に進めていってもらってる感じだけど…あっちは相当困惑してるみたいだよ」
カルマの視線の先では、蝶が地面にへたり込んで両手を胸の前に持っていき、それを見て目を見開いていた。
全てのスキルを元々そつなくこなしていたが、体術に関しては、本当にここに来てからの蝶の努力が実を結んだものだった。
元から出来ていたものではなく、どちらかというと元々一番出来なかったもの。
それを俺に教えを乞い、自ら進んで培ってきたものだ。
「……な、お前は弱くなんかねえだろ。ただ気が優しいのと自信が無くなってて弱気になってるってだけだ。俺の自慢の一番弟子は…俺の誇りは十分に強いさ、俺が保証する」
蝶の目の前にしゃがみこんで頭を撫でる。
『…………久しぶりすぎてまだ何かおかしい…何か、懐かしいはずなのに新鮮な気分』
「そりゃお前が前より強くなって成長してっからだよ。日頃どんだけトレーニングしてんのかは知らねえが、ちゃんと身体が出来上がってる証拠だろ」
『ん…』
少しだけ頬を緩ませた少女に俺まで頬が緩んで、心の中でやっと戻ってきたな、おかえり、と呟いた。
