第6章 あたたかい場所
「よし、それでいいな。んじゃこっからどうする…蝶、お前カルマと実戦やってみればどうだ?」
『えっ?…え、実戦!?』
よしよしと頭を撫でて思いついた提案を言えば、蝶もカルマも大きく反応した。
「中也さん、実戦って?」
「ああ、実際にガチで対戦しながら、身体に動きを覚え込ませるんだよ。本当の実戦じゃあ、これ程までに役に立つ訓練はねぇ。蝶くれえの強さの奴相手に出来るようになりゃ、上出来だろ」
『ま、待って中也さん!確かにそれが一番だけど、私なんかじゃ相手にならないよ!?カルマ君本当に強いんだからっ…』
カルマの強さはまあ分からないでもない。
だがやはり、まだまだ軽いし甘い。
しかしそこに関してはまだあともうちょっとのところ。
昨日一日である程度新しく教えた防御術は徹底して使えるようにしたはずだし、闘いにおいて相手を見据える姿勢から気持ち作りまで、ちゃんと教えこんである。
蝶を相手にしたって怪我しねえくらいには育ってるはずだし、何よりも元の筋が良いし骨もある。
まあ俺からしてみりゃカルマと蝶の強さには歴然の差があるのだが…どうやらこいつはまだよく自分の強さを理解してはいないようだ。
「やってみればいい。お前くらいに良い相手はそういねえだろ…それこそ俺が本気でやったら勝負にならねえ」
『……ほ、本当にカルマ君とやるの?』
「…しようよ蝶ちゃん。中也さんがここまで言ってるんだ、本当に蝶ちゃんの攻撃捌けるくらいになれば、自分のものにちゃんと出来る気がする」
『いや、だから私そんなに強くないんだってば…と、とりあえずやってみてもいいけど、多分すぐに私が相手じゃダメになっちゃうと思うよ』
どこまでいっても自信の無い蝶だが、だからこそだろうか。
余計にカルマは警戒心を高めている。
顔に出していないつもりだろうが態度でバレバレだ。
実際に本気の蝶の体術を見た事は無いのだろうし、何より修学旅行の時、カルマは蝶に一度助けられてもいる。
「うん、お願い」
「……じゃ、とりあえずカルマが一回膝をついたら切るからな。俺は少し離れておくが…蝶、手ぇ抜くなよ」
蝶を離して少し離れた場所に移動し、二人が向かい合って静かな空気が漂うのを感じ取る。
カルマが一つ頷いたその瞬間__
「…っ、!!?重っ、くね…っ…!?」
一撃の蹴りを防いで、カルマは膝を地面についた。
