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第6章 あたたかい場所


「……っと、とりあえず立原と樋口と広津さんはもう解散してもいいだろ、色々助かった…で、蝶。お前またなんでいきなり…?」

三人にはその場から離れてもらい、腕の中におさまる少女に目を向けなおす。
正直驚かされてばかりだ。

毎日椚ヶ丘でフリーランニング…は聞いていたから知っていたが、蓋を開けてみてみれば、俺が東京に滞在していた間だけでも毎日欠かさず色々なトレーニングをしていた。

基礎体力を向上させるための運動は勿論、蝶自身が自覚があるのか己の力を増幅させるような効果の期待出来るもの。

それだけでなく、もう十分な程に磨きあげられているのに、わざわざ山の中に専用の射撃スポットまでこっそり作って、一人で射撃の練習までしてやがったってのに。

『…能力使えなくなったら、私ただの木偶の坊になっちゃうから。テレポートするのもさせるのも無しで、素手だけで強くならなくちゃ…中也さんも探偵社の皆も手の届かないような南の島で、何かあった時にちゃんと動けないとダメなの』

「お前はもう十分強いだろ、何でそんなに強くなりたがる。それ以上身体を使ったって、俺が認めるくれえに強くなってんのに…身体壊したら元も子もねえんだぞ」

声を少し低くして、ビクつかせるように言ったつもりだった。
しかし蝶の意思は相当強いらしく、私が大丈夫なのは知ってるでしょう?と言い返してきやがる。

今回ばかりは可愛くねえぞ、治るっつったって、すぐに回復するっつったって、痛ぇもんは痛ぇんだ。

「…ダメだ、お前はそれでも大丈夫なように仕上がってる。今自分がしてる努力でだって大したもんじゃねえか、何が不満なんだよ?」

『………私が弱いの、知ってるでしょ中也さん』

「ただの純粋な力の差は個人差があるから仕方ねえもんだ。そのへんだってお前は能力で上手くカバーして…それがなくとも、利用して返り討ちにする方法だって習得してる。何をそんなに気に病んでる」

もしかすると、鷹岡の一件をまだ引きずっているのかもしれない。
あれは人質になるような人員が沢山いて、その上教師として入ってきた奴に最初の一撃で不意に一杯食わされたのが仇となっただけだ。

あとは蝶が能力さえ使っていれば、負けるような相手じゃあない。

『…気に病んでるんじゃないの。最近、組合の動きが分からないからちょっと……ほんのちょっと、思うところがあるだけ』
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