第6章 あたたかい場所
「俺の…?確かに黒いもんばっかだが、それでそんな好きになるもんか?」
『ん、大好きだよ。中也さんの黒が一番好き、一番暖かくって、一番かっこいい色なの。……私の中の一番の色なの』
最後だけがやけに小さい声だったが、恐らく昔の事でも思い出しているのだろう。
確かに蝶といえば白いイメージしかねえが、蝶から聞いてきた色々なこいつの話を考えれば、確かに黒色が大切なものなのだとも考えられる。
俺には想像もつかないくらいにこいつには色んな経験があり、それと一緒に知識もある。
そんな多くのものから選び出した、こいつの中の一番が俺だという事が、何よりも嬉しかった。
一番が俺、だから余計に黒が好き。
なんて単純な思考なのだと思いもするかもしれないが、恐らく蝶の中では相当な思い入れがある色だ。
「色まで俺が一番かよ…外套もまた黒いの買うか?仕事用に」
『うん、中也さんが一番だよ。…真っ黒でもいいのかな?今度社長に許可取ってみる』
一応探偵社のイメージがあるからとでも考えているのだろうか。
そのあたりも蝶らしい。
「そうか…黒、と白もだな。まあお前は何着ても似合うんだが」
『ま、また知らないうちに服買ってくるの?ダメだよ、私のものばっかりにお金費やしちゃ』
「お前成長したから枚数少ねえだろが、いいから勝手に買われてろ。まあ流石に色付きのもんも着て欲しいから白黒ばっかにはしねえけど」
目をぱちくりさせて俺に再び擦り寄ってきて、口にはしないものの、珍しく持病を発病している時に照れているのだということが分かった。
それが何とも面白くて可愛くて、クスリと笑いをこぼしてまた頭を撫でる。
こいつに触れる時、俺の手は唯一優しくなれる。
「にしても白はまだ分かるが、黒は意外だったな…確かにお前に聞くのが正解だったらしい」
事情を知る大人三人が微笑ましい顔を蝶に向けて、同じくクス、と笑う。
カルマも今回ばかりは静かなもんで、顔を俺で隠してそうでしょ、と生意気な風に言う蝶に穏やかな目を向けている。
「ああ。やっぱ蝶には敵わねえよ…っと」
『へ、っ…きゃっ……!?』
蝶を抱き上げて横抱きにする。
「お前、どうせまだ持病が治ってねえとか言って離れねえんだろ?そろそろカルマの相手しなくちゃならねえし…」
『…私も、久しぶりに習いたい』
「…………あ?……え、お前が!!?」
