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第6章 あたたかい場所


「いや、だから本当に話をしてただけで何にも…」

『香水の匂いが移り込むくらいの距離と時間、話してたんだ?へえ…』

これは非常に拙い事態になってきた。
浮気…という表現は違うかもしれないが、本格的にそのような疑いがかけられている。

カルマの野郎は肩を震わせて笑っていやがるし、立原も樋口も蝶のオーラに圧倒されて口を挟めそうにない。

「だからだな、今日の昼間は女にも聞いた方がいいような内容の話があって!!」

『それなら私に聞けばいいじゃない。一番に私に聞いてくれればいいのに…なんでそれもわざわざ会って、私に内緒にしようとまでして聞いてるの』

香水の匂いが移り込むくらいにと蝶は言うが、それは恐らく蝶の五感が優れているだけであって、別に移り込んでいるだなんてことはないはずだ。

俺と樋口、そして芥川の妹は、デカめのテーブルを挟んだ向かい側に座っていたのだから。

「…蝶ちゃん、中原君は昼間、蝶ちゃんの事について色々と話を聞いていただけなんだよ。中原君、蝶ちゃんもこう言っているし、直接本人に聞いてみれば良いんじゃないのかい」

意外にもというか流石というか、救世主は広津さんだった。

『私について…?中也さんくらいに私の事を知り尽くしてるような人が?』

「ブッ…その言い方はやめねえか……じゃなくて、蝶本人に聞くって!!」

まあ確かにそれが一番早いのだが、単純に馬鹿みてえな聞き方をすればすぐに察知されてしまう。
こいつにだけは絶対ぇに気付かれたくないのだが…

持病を発症した状態で少し不機嫌になっている蝶というのもまた可愛らしいもんで、しかもあろう事か俺がポートマフィアの部下といるだけで嫉妬しているなどという愛らしさに、折れる以外の選択肢は俺の中にはもう無かった。

「……ハァ、仕方ねえ。蝶が好きなもんを色々と聞いてたんだよ、女同士でじゃねえと喋ってない事とか察しがつかねえ部分もあるだろうと思ってな。…お前、色の中なら何色が好きだ?」

『!本当に私…っ?色って、私何色でも好きだよ?まさかまた服買ってくるつもりじゃ「いいから」…白か黒…………どっちか一つに絞れって言われたら、黒』

蝶の返答は意外なもので、全員が目を丸くする。

『…白は、中也さんが私に付けてくれた名前で…好きだって、綺麗って言ってくれる髪の色だからで…………黒は、中也さんの色だから』

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