第6章 あたたかい場所
「…小動物?」
「いや、というよりこれは…」
「成程、これで愛玩動物…」
「なんでこんな仕上がっちゃってんの、中也さん本当にどんな教育してんの」
「おい最後のやつカルマだろ」
愛玩動物だなんて懐かしいものを耳にするも、蝶は聞こえているのか聞こえていないのか、ずっと俺に擦り寄りっぱなしだ。
何だこいつ、何だこれ。
『んふふ〜♪』
撫でれば撫でるだけ、どんどんどんどん機嫌が良くなる。
悶え死にそうな程可愛いこいつに胸がギュッと締め付けられる。
やべぇ、こいつ、可愛すぎる。
「……蝶、お前もしかして持病…?」
『多分そう…バレちゃった?』
隠す素振りもなく、人懐っこい猫のようにゴロゴロと俺に…俺の手に甘える少女。
ダメだ、こんな事してっから愛玩動物とか言って余計に変態みてえに……!!
なんて思いはするものの、目の前の少女が可愛すぎて、はねのける事も手を止めることも出来ない。
そろそろ末期か。
ああそうだよ、とっくの昔から末期だよ俺は。
「持病!?」
「そういや前も言ってたような…」
「え、蝶、お前何か病気なのか!?」
「ふむ…初耳だね」
持病という、俺がいくら探しても蝶の言う通りそう表現するにしか至らなかっただけの習性のようなものに、一同は驚く。
恐らくカルマは蝶に聞いている可能性はあるが、他の三人はちゃんと聞いたことがないのだろう、本気で心配して焦っている。
「あー…病気じゃねえんだが。習性っつうか、こいつの機嫌が頗る良くなる状態というか…いつにも増して甘えたがりになる時があるというか」
『む…違う、習性じゃない。中也さん症候群』
「だから俺がそれを自分で言うわけねえだろって!?…つか何でそもそも俺の名前なんか入れてやがんだよ!!」
今更だが本当にそれだけが気になって手を止めると、また蝶の機嫌が少し悪くなった…というよりは少し物足りなさそうになった。
『あ…やめちゃうの?』
「ぐあっ……や、やめねえよッ!!」
『わわ…、っ』
説明なんてものはそっちのけで小首を傾げた蝶に胸を撃ち抜かれ、めいいっぱい撫で回してやる。
『…いつもより中也さんにこうしてて欲しくなるから中也さん症候群。中也さんともっともっとこうしてたくなるから……中也さんがいつもよりもっと大好きだから、中也さん症候群だよ』
「よし、帰りに甘いもんでも食いに行くか」
