第6章 あたたかい場所
直接何をと口に出してはいないけど、何で私にキスをするのかを聞きたいのだと…どうして私にキスなんてしたいと思うのかと聞いているのだと、きっと分かってくれている。
何か覚悟したような目をしているから。
声も雰囲気も、鋭くて真剣なものになっているから。
「…ひっでえ顔。泣きながら俺にキスなんかしてんじゃねえよ……」
『中也さんのせい…私いつも必死なだけで……ッン、んぅッ!…んんッ…』
またいきなりキスをされて、中也さんの舌が入ってくる。
さっきよりも断然長くて深くて、感じる度に身体中がビクビク震える。
口の中でお互いの唾液がぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、逃げようとしても中也さんにはやっぱり叶わなくて、何度も何度も捕まって感じさせられる。
「……っは、ッ…………どうしたよ、んな物足りなさそうな顔して」
中也さんに離されて、恥ずかしい事なはずなのに、いつものように唾液を残してもらえなくて…中也さんのが飲めなくて、頭がおかしく蕩けきる。
『んぁ……ッ、な、何でもなくてっ…』
「…………仕方ねえ、俺に非があったみてえだし…今日は意地悪なしだ」
『ふ、っ…え……?…ッンク、ッ…ン、ンンッ!!』
混ざりあった唾液で余計にヌルヌルと舌同士が絡み合わせられた。
チュ、とリップ音を立てて
ゆっくりと舌が引き抜かれ、私の口に入れられた唾液を飲みきると、中也さんと繋がっていた糸がゆっくりと切れる。
中也さんにしがみつくだけの力も入れられなくて、視界がボヤけてトロンとした目を伏せていれば、私の身体を支えながら中也さんがおでこにキスをする。
『ぁッ…ぅ、ぁ……ッ』
「……やっぱその顔が良い。俺とキスするんなら、泣きながらなんかすんじゃねえ。そうやって俺にぐちゃぐちゃにされて恥ずかしがって…最高に可愛くてそそる顔ですればいい」
中也さんの言葉でまた感じてしまって、身体をビクリと跳ねさせる。
最終的に息を整えてから恥ずかしさに胸が押しつぶされそうになって、中也さんの首元に抱き着いた。
『……っ、ほ、めすぎ…ッ、趣味、悪いッ!』
「こっちが本物の男のロマンだよ。男は皆、特定の女を相手にエロい思考になっちまうもんさ」
『ひ、開き直っ!!?……〜〜〜!!!』
特定の女にという言葉が頭にリピートされて、中也さんの背中をポカポカと殴りつけた。
「だから効かねえっつの」
