第6章 あたたかい場所
「中也さん、流石に蝶ちゃんにそれはやりすぎなんじゃ…」
「……ハッ、何言ってやがる。今に始まった事じゃねえよ」
中也さんが私を、執務室でずっとしていてくれたように、落ち着かせるようにトントンと撫でる。
キスをしていたといっても、こっちの深い方だとは思っていなかったのだろうか。
周りが驚いているのが分かる。
それが余計に恥ずかしくって、私が恥ずかしいところ見せちゃったんだって、いやらしい子だってバレちゃったって、余計に中也さんのシャツを握りしめて羞恥に耐える。
「えっ、幹部と蝶が、ええ!?」
「あ、わ、私ちょっと頭が…」
「……そりゃ蝶ちゃんも悲しくなっちゃうわけだわ」
カルマ君は私が聞いた、さっきの中也さんの発言を知っている。
ただの触れるだけのキスなんかじゃなくて、こんな事までしているんだ。
中也さんの言う通り、今に始まった事じゃない。
ずっと一途に想い続けてて、やっとこんな風に中也さんからされるようになって、…ちょっとくらい意識してくれてるのかななんて思ってるところであんな事言われたら、誰だってショックだよね?
悲しく、なるよね?
「蝶が?…お前、俺が置いていった事を怒ってたんじゃねえのかよ?いつもみたく寂しがって来たんじゃ…」
『…ッ、ん……さ、いしょは……そう』
改めて皆の目の前で声を出すのが恥ずかしくて、途切れ途切れに小さく言う。
「最初?最初って、なら今は何で…」
それが言えずに黙りこくっていると、カルマ君が樋口さんや立原、そして最後に入ってきた広津さんに何かを話しているのが見えた。
それを聞いて納得したように三人はこちらに目を向けて、中也さんに視線を集める。
「な、何だよ手前ら…?お、俺か!?何かしたか俺!?」
「いや、タイミングのズレっつうか…」
「中原さんが勿体無いことをされただけというか」
「まあこれは、蝶ちゃんがカッとなるのも無理はないでしょう」
ね?とカルマ君の声に合わせて三人が同意の声をあげる。
中也さんは私の方にまた目を向けて、それに目を合わせないように私は中也さんのベストをキュ、と引っ張った。
『…………私、誰とでもこんな事、しないです』
「んな事分かってるって何回も…」
『…じゃあ、何であんなに大きな声出すの。何で、そうなったら困るみたいな事言ってたの』
「でっけえ声…?困るって……」
