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第6章 あたたかい場所


「……蝶」

『!…っ、来ないで下さい。じゃないとまた私中也さん困らせようとしちゃいますから』

冷静を保って言うけれども、怖くて怖くてたまらない。
カルマ君から腕を離して自身の胸の前で震えるのを隠す。

「俺がいつ困るって言ったんだ…取り敢えず話を聞いてくれ」

『聞いてますっ、私はいつだって、中也さんの声を聞いてます…っ、や、ッ!?』

私の隣に立ってピタリと足を止め、中也さんがそこに来たかと思えば、カルマ君から引き剥がされて中也さんの腕の中に納められる。

カルマ君は抵抗もせずに私を離して、中也さんは強く強く私を抱きしめる。

いつもの中也さんだ…いつものあったかさだ。
いつもの……安心感だ。

「なんで俺がお前にんな事思わなくちゃならねえんだよ。嫌いな奴にこんな事するか普通?迷惑な奴の所にわざわざ来るか、俺が」

『だ、って…さっき中也さん、返してくれなかった!応えてくれなかった!!』

なんて子供じみた返しだろう。
言ってくれないから…行動でも返してくれないから、私は何にも分かんないの。

『気が付いたら中也さんいなくって、私の事嫌いになっちゃったのかなって、見捨てられちゃったのかなってっ…中也さんがいないとやだよ、一人にしないでよ!置いていかないでよ!!』

こんな事が言いたいんじゃない。
ただ、泣いてる理由が知られたくないだけ。

私が好きでいてもいい理由が、欲しいだけ。

『………っ、迷惑じゃないんなら、こうしてくれればよかったじゃない…』

悔しい。
自分から必死に離れようとしてたのに、この人にこうされるだけで安心してしまう自分が嫌になる。

意志がぐらぐら揺れる自分が、嫌になる。

『…私、やっぱり離れて……ッ、ん…ぅッ!?…ふ、ッんんッ!!んッ…』

中也さんの肩を押して離れようとした時、後頭部を押さえられて、中也さんの唇で自分の唇を塞がれた。
中也さんはしゃがんでいるけど私は立ったまんまで…皆の見てる前で、さっき私が離された時のように、舌を入れて。

びっくりするくらいに優しいキス。
蕩けるような、気持ちいいキス。

肩を上下に跳ね上げて舌を絡められる気持ちよさに酔いしれていれば、唾液がいっぱいになる前に離された。

ちょっとだけ私の方に残った唾液を飲み込んで膝を崩れさせれば中也さんがそれを支え、暫く肩で息をして中也さんにしがみついていた。
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