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第6章 あたたかい場所


「で、何でいきなりそんな取り乱してんのさ?喧嘩した…っていうよりはさっきのが喧嘩か」

カルマ君に水をもらって少しだけ飲み、中也さんを探して扉を作って覗き込んだ時に聞こえた、中也さんの言葉をカルマ君に伝える。

キスもあんなにいっぱい交わして、その先だって…カルマ君や他の誰かに言うことなんてとても出来ないけれど、私はそんな事を平気で許せるような人間じゃない。

これでもここで生きてきた間…白石蝶が生まれて少ししてからずっとずっと、中也さんの事をずっと一途に想っているんだ。

口に出すよう努力もした、勇気が出るところまでは…ちょっとくらい意識してもらえるようには、ちゃんと言って、行動してきた。

「成程、よりにもよってその時だけ聞いちゃってたってわけか…」

『……タダでさえ知らないうちに一人で置いていかれて寂しくて不安だったのに、それでカッてなっちゃって…………私、皆の前でキスまでしたんだけどなぁ』

口で言っても分かってくれないから、もうどうすればいいのかなんて分からないから、自分のもつ最大限の勇気を振り絞ってああするしか思い浮かばなかった。

『でも、それでもダメだったよ。…っ、私、中也さんからされるの拒んだことも、抵抗した事もないんだよっ?誰にでも出来るって思われてるのかな?好きでもない人にそんなのされても……嬉しくないよ私』

「……皆分かってる。蝶ちゃんが中也さんの事想ってるのも、他の誰かにそういう事されたって出来る限り抵抗するような子だって事も。中也さんだって分かってるはずだよ」

そう、カルマ君の言う通り、中也さんはそのあたりはちゃんと分かっているはずなのだ。
トウェインさんとの一件の影響で、もう分かっているはずなのだ。

『でも、なんかもう暫くダメだよ私。…中也さんね、私が抱き着いたら基本的には絶対離したりなんてしないの。そんな事、普通されないし、絶対に受け止めてくれるの』

最後に抱きしめたのを思い出して、苦しいくらいに寂しくなった。
どうしてか呆然としていた中也さんは、何故か、応えてはくれなかった。

『………っ、抱きしめ返して欲しかった、なぁ…っ?抱きつくのも迷惑だったのかなあ…、カルマ君……?』

フワリと、目の前のカルマ君に包み込まれる。
彼よりも大きくて彼よりも華奢で、そしてちょっとだけ彼よりも柔らかい抱擁。

「ごめん…ちょっとだけ」
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