第6章 あたたかい場所
「はぁッ……は、ッ………、言いたい事があるなら口で言え…っ、んな風に、泣きながらこんな事してんじゃねえ!!」
中也さんが上体を起こして私の肩を掴み、先程のように声を荒らげる。
中也さんが私を怒るという滅多にない光景に…私の突然の行動に、全員が口を開けたまま何も言えないでいた。
『……全部言ってるじゃないっ、いつもいつも、言ってるじゃない!!』
中也さんの手私を押す手がピクリと震えて、力が弱まる。
相手につられて私も感情的になって、涙と一緒になって色んなものが胸の奥から溢れ出す。
『なんで置いてっちゃうのって、一人で行っちゃうのって聞いた。私の事嫌いになっちゃったのかって…好きなのか嫌いなのかどっちなのって!……っ、中也さんだからってっ…大好きだよっていつも………いつも、言ってるっ!!』
中也さんは何も言い返してくれない。
いっその事何かヤケになって、怒って言い返してくれでもすれば、私はいくらでも言い返せるのに。
何だって口に出せるのに。
「…んで、……なんで今そんな事」
『私の質問に答えてくれないじゃない!…私の言ってる事、全然っ……聞いてくれて、ないじゃない…………っ』
ねえ、中也さん。
私中也さんの事大好きなの、日に日にもっと大好きになっていっちゃってるの。
『分かってるって、知ってるって、全然何にも分かってない!!口にしたって行動に移したって、全部全部知らないふりばっかりしてるんでしょ!?』
「違っ、俺は!!」
『……っ、何ですか…言ってくれなきゃ、分かんないですよ…っ』
私の事がそういう意味で好きだとか、そんな言葉が貰えなくたっていい。
ただ、無条件でこの人に愛されていたい…大事にしてるって、感じたい。
なのに、いつもならそうやって言ってくれるのに。
『…………分かんない、です……ッ、カルマ君、訓練室入ろ。ごめん、私今かなり余裕ない』
「えっ、いや俺はいいけど…」
『…いい、頭冷やす。ごめんなさい、中也さん困らせて。もうこういう事して困らせないようにします……ごめんなさい、ッ』
最後にと、一度だけどうしても触れたくて、中也さんを抱きしめてから離れた。
カルマ君の手を取って二人で訓練室に入り、止まらない涙を何度も何度も手で拭う。
『……好き、なのになぁ…っ?何でだろ、馬鹿だよね私…』
「…………本当、馬鹿だよ二人共」