第6章 あたたかい場所
止められなくなった涙をどうすることも出来なくて、どうせなら本来の目的のせいにしてしまおう、中也さんがいなくて寂しくって泣いていたことにしてしまおうなんてずるい考えが浮かぶ。
ここで、そうじゃないのって言えないから…意気地無しだから伝わらないのに。
ぐちゃぐちゃになってる顔なんて関係ない。
ただ、このまま中也さんと離れてしまうのは耐えられない。
中也さんに見捨てられるのは…耐えられない。
勢いよく扉を開けて中也さんに飛びついて、勢いで床に押し倒して馬乗りになる。
そして散々に泣きじゃくって中也さんの胸に顔を埋めて、中也さんの体温を…中也さんの存在を確かめるように、縋りつく。
『なんで私の事置いてっちゃうのっ、?なんで一人でどっか行っちゃうの…っ?』
「ち、蝶待て!一旦落ち着けって!」
嫌だよ、離れたくないよ。
中也さんの事を男の人として好きな私じゃ、ダメなんですか?
声を荒らげて周りに怒鳴り散らす程に、それはあってはならない事なんですか??
『やだ!!中也さんと離れたくないのっ!!』
私に上に乗っかられているのに、他の人が見てる前なのに私の涙を指で掬う中也さんに、なんであんな事言うのに優しくするの、と胸の奥がざわざわする。
「目が腫れてる…一人にしたのは悪かった、俺はここにいるからそんな顔すんな」
『中也さん、私の事嫌い?嫌いになっちゃった?それとも好きなの?どっちなのっ?』
「蝶……?」
分かんないよ、何もかも。
中也さんがどう思ってるのかなんてまだ見て見ぬふりなんか出来てたはずなのに。
あれだけ頑張って、中也さんにならって恥ずかしい事を許してきて。
ちっとも私の気持ちなんて伝わりもしてないの?
私のそういう気持ちは迷惑になっちゃうの?
『……っ、ん…』
「蝶!?」
「蝶ちゃん!!?」
「っ!?…っ、蝶っ、おまっ……~~!!」
中也さんに無理矢理上からキスをする。
人目があるなんて関係ない。
誰にも、中也さんは渡さない。
私の一番なの、私が一番じゃなきゃ嫌なの。
私、好きでもない人にキスなんてしないよ?
今もすっごくすっごく怖いんだよ?
肩に手を置かれて中也さんに少し力を入れられて、それでも唇を塞ぎ続ける。
どうしようもなくなった気持ちをぶつけるように舌を入れようとした時。
『…っ、!』
また、中也さんに離された。