第6章 あたたかい場所
蝶の敏感な部分のすぐ先のシーツが濡れていることから、どのタイミングでなのかは分からないが、潮を吹いたんだなということは分かった。
一応職場の仮眠用ベッドで、しかも普段面倒くさくて使う事なんて無いだけに、なんとか自分で処理しなければならないのだが
「…………起こせねえしなぁ」
きっとこんなタイミングで起こしでもしたら、テンパって挙動不審になるに違いねえ。
最後の方は完全に蝶も予想してなかったみてえだし…蝶が可愛すぎて調子に乗った、認めよう。
蝶のあられもない姿を明るいところで直視でもすれば、また自分が反応してしまうだろうし、どうしたものか…
考えてたどり着いた結論は、至極簡単なものだった。
服装も全て整えて元に戻した蝶をちゃんと枕の上に寝かせてやり、濡れていたシーツ…もとい掛け布団一式を剥ぐ。
そして蝶の身体が冷えないように自分の外套をかけてやって、部屋の照明はそのままに、すぐにランドリールームの方へと持っていく事にした。
ランドリールームから出てもう一度執務室に戻れば、未だ眠りこけている蝶が目に入る。
まさか本当にあんなところで気を失うとは思っていなかったのだが、最早それも含めてこの少女が愛おしい。
蝶を横目に脱いだものを着直して格好を戻し、カルマ達の様子を見るために…………蝶をこれ以上見ているのが小っ恥ずかしくなってきたため、訓練室へと足を運ぶ事にした。
のはいいのだが、その道中に、珍しく昼間同じ場所で昼食をとっていた樋口と出会う。
頭を下げられたため、挨拶を返して頭を上げてもらえば、何か聞きづらそうな表情で訓練室までの道のりを着いてきた。
「…何か聞きたいことでもあんのか。あるんなら言え、何も思わねえから」
「!で、では…その、中原幹部は………ち、蝶ちゃんと恋人同士なのですか?」
「は?…………はああ!!?」
大きな声を出せばビクッと樋口が目を丸くして驚いて、訓練室の方から何だ何だとカルマと立原、そして広津さんがこちらに出てくる。
「ち、昼食時に今日ご一緒させていただいた理由も理由ですし…それに何やら口付けの先がどうとかと仰られていたので」
「待て待て待て!!蝶が俺とんな関係にあるわけねえだろ、馬鹿か手前は!?」
訓練室から出てきた奴らは事情を察したのか、カルマが口を開いた。
「お姉さん誰?まさか中也さんの本命?」