第6章 あたたかい場所
中也さんを押し倒して中也さんの隣に移動し、彼に口付けをおとす。
中也さんがしてくれるみたいに、長い長い、触れるだけのものを。
中也さんは私を受け入れてくれたけれど、私が彼のズボンに触れた瞬間、腕を掴まれて動かせなくなった。
『んっ、…!』
少し力がいつもより強くって、ちょっとだけ手首が痛い。
中也さんの胸に頭を預けてその痛みに耐えるよう声を押し殺していると、中也さんが少し低い声で話しかける。
「………何するつもりだ。お前、俺に何する気だった」
『……ちゅ、やさっ…』
悪気なんてこれっぽっちもなかった。
ただ貴方にも気持ちよくなってもらいたくて…本で見たように、人に聞いたことのあるように、頑張ってやってみようとしただけで…
ギリギリと力の入る腕を震わせて身体を強ばらせていれば、すぐに中也さんはハッとして腕を離してくれた。
『っ、ごめんなさいっ…』
中也さんの胸に縋りつくように彼のシャツを握りしめて、掴まれていた腕を震わせる。
「いや、俺が焦っただけだ、悪い…んでお前、何する気だったんだよ」
頭と背中を撫でて声色を戻して聞く中也さんに、恥ずかしかったけど、ちゃんと答えた。
『……中也さん、私にするばっかりだから。辛いかなって………本にあったみたいにしたら、中也さん気持ちよくなってくれるかなって』
「はあっ!?お前んな事考えてたのか!!?……あー、これだから頭が良いのも考えもんなんだよな…」
怒るでも侮蔑するでもなくて項垂れただけの中也さんに、私の方こそ驚いた。
「お前岡島の本見て学習しやがっただろ…因みに、どうするつもりだったんだよ」
『…………舐める?』
「ブッ!!!…ッホ、ゲホッ!!……あ、あいつマジで次会ったら締める、絶対ぇ締める…っ」
小首を傾げて言った途端に噎せ始めた中也さんに困惑して、何故か撫でるスピードの早くなる中也さんの手になすがままにされていれば、どこかで岡島君の命の危機を感じた。
『中也さん、辛くないの?痛く、ないの?』
「っ…こんなもん、生理現象みてえなもんなんだよ。お前は気にしなくていいんだ。ほっときゃ勝手になおるから」
気にしなくていいなんて言ったって、中也さんは眉を寄せて、やっぱりちょっと苦しそう。
それなのにそう言う彼は…これが、俗に言うところのカッコつけなのだろうか。
プライドなのだろうか。