第6章 あたたかい場所
言いかけて、中也さんの手が頭から離れて、私の両腕を掴む。
『分かるよ。中也さんがこんな事したって、私に乱暴なんてしない事くらい』
本当はちょっと怖いけど、何よりも大好きな中也さんに、我慢なんてしてほしくない。
遠慮なんて、してほしくない。
「……いいや、分かってねえ。肝心な部分がちゃんと、分かっちゃいねえ…んな状態で俺の事を煽れば、お前本当に後悔すんぞ」
『中也さんは私に酷いことしないでしょ』
「お前がちゃんと分かってるならそうなるが、分かりきってねえ以上は酷い事になっちまうだろうな」
さっきから何を言っているんだこの人は。
私がちゃんと分かってるならとか、肝心な部分が分かっていないだとか。
『?中也さん、私以外の女の人に興味ないんでしょ?…もっといっぱいキスして、それ以上の事がしたいんじゃないの?……我慢、してるんじゃないの?』
「…やっぱ分かってねえ。もっと根本的なところが分かってねえとお前、辛くなんぞ」
『辛くなんてならないよ。中也さんがいるんなら』
根本的な部分、それが何なのか、私には分からない。
けれどそれはやはり私の事を気遣っての言葉で、そんな中也さんが愛おしく感じる。
「そういうんじゃなくってだな…俺はいいとして、お前はまだ子供なんだ。まだ知らなくていいもんなんかいっぱいあんだよ」
なんでまた、私と距離を作ろうとするの?
なんでまた、私の事をそうやって子供扱いするの?
『……っ、私、子供じゃないよ!!…中也さんに我慢させたくないのっ、中也さんともっと、もっと……っ』
感情に任せて声を出そうとしても、その先を知らないから、何も言えない。
何がしたいのか、どうしたいのか…それが何なのかが分からない。
悔しくて、中也さんに子供扱いされるのが嫌で嫌で仕方なくて……悲しみが胸の奥から溢れ出てきて涙がポロポロとこぼれ落ちる。
中也さんに腕を掴まれてて拭うことも出来ず、ただただ服にシミを作るばかり。
これじゃあ本当にただの子供だ。
「………お前が子供じゃねえってんなら、俺の今までの我慢が水の泡になっちまうんだが」
『子供じゃないっ…子供じゃ、ないっ…!』
中也さんが一番よく知ってるくせに。
一番よく、私の事を分かってるくせに。
「…どうしてほしい。何がしたい」
『……中也さんの好きなように、してほしい』
腕が、解放された。