第2章 暗闇の中で
自身の心境、恐怖、苦しみ…それらを伝えて暫くし、涙は何とかおさまった。
『……ごめんねカルマ君。こんな話で時間とらせちゃって。』
「ううん、俺は、話を聞く事くらいでしか蝶ちゃんの力になれないから。」
困ったような顔で笑うカルマ君。
『そんな事、ないよ。まだ学校に来てそんなに経ってないけど、いつも頼らせてもらってる。』
「そっか。…でも、きっともう少しの我慢だよ。絶対中也さんは蝶ちゃんのとこに来てくれる。」
何でそんな風に断言出来るのかは、私には分からない。
しかし、彼の言葉はすんなりと私の頭に響いてきて、受け止めることが出来た。
『不思議、カルマ君がそう言うんなら、本当にそうなるような気がする。』
「それはよかった。俺らじゃ役不足かもしれないけどさ、何かあったらまた誰にだって頼ってよ。一人で抱え込む必要ないんだしさ。」
はい、これ。と言って彼は突然、私に彼の好物であるはずのいちご煮オレを差し出した。
一駅前に停車したところで、私に煮オレシリーズの飲み物の素晴らしさを伝えるべく買ってきたんだとか。
『あ、ありがとう。今飲んだ方がいい?』
「ううん、確かに感想は早く聞きたいとこだけど、京都に着いてからの方がゆっくりできるだろうし。」
そろそろ戻ろうかな、と元いた車両の方を見つめる。
「そうだね。でも俺、もうちょっとここにいるよ。座ってる時間長すぎて疲れちゃったから。」
『うん、分かった。じゃあまたね。』
カルマ君にもまた何かお礼しよう。
いちご煮オレを片手に、イリーナ先生の隣に戻っていった。
残った赤羽はというと__
「で、これ、うちのプロ暗殺者の先生曰く、盗聴機能付きの発信機…なんだけど。聞こえてる?」
蝶が去った後、こっそりと盗っていたのであろう、黒い小型無線機に向かって話しかけている。
相手からの応答はない。
仕方なく、彼はかけに出た。
「えっと、俺の予想が外れたり見間違いしたりしてない限り、横浜のポートマフィアの皆さんで合ってるよね?」
これでもまだ応答はない。
ならば、もう焦らさずに、最後まで言ってしまおう。
彼は、目的の人物の名前を呼んだ。
「返事ないからもう言うけど、これ、聞いてるんでしょ?中也さんとやら。俺は会ったことないから合ってるかは分かんないけど。」
「___何者だ、手前?」