第6章 あたたかい場所
岡島君がわけのわからないことを叫んでいる様が異様すぎて、思わずカルマ君の後ろに隠れた。
「…なぁに言ってんの岡島?蝶ちゃん完全に引いてるよこれ」
「なっ!!…って、何でお前らがここにいんだよ?」
岡島君の反応で皆こちらに気付いて、私もひょこっとカルマ君から顔を出した。
『虫取りしに学校来るって話してたから、念のために学校来てたの』
「蝶ちゃんは皆の護衛。んで俺はその蝶ちゃんの護衛」
『ちょ、何言ってんの』
カルマ君を見上げてちょっと小突けば、岡島君と前原君がぬっ、と目の前に現れる。
「ほうほう、下はオフショルダーかぁ、いいセンスしてるなあ。さすが白石、希望の光!!」
前原君は何故かガッツポーズで私を崇めるようにそんな事を言っているのだが、問題は岡島君の方だった。
「上着なのにシースルーだなんて、肩出してんの丸見えになんぜ白石よお…これぞ男のロマン!ちょーっとだけその上着をちらっとしてくれれば」
『へっ!?』
「大丈夫、すぐに全部終わるかっ、ああ!!?」
何かに取り憑かれているかのように異様なオーラを醸し出しながら私の両肩に手を置いた岡島君に肩をはね上げれば、何故か岡島君は呻き声をあげた。
肩から手が離れたので上を向くと、岡島君の頭がカルマくんの手に掴まれていて、かなりそこに力が入っているのが見ただけでもよく分かる。
「だぁから、俺蝶ちゃんの護衛でいるんだってば」
「なっ、なな何でカルマがわざわざ…ってぇ!?降参!ギブ、ギブ!!」
岡島君の頭から手を離して私の頭をぽんぽん、と撫でてから、少し屈んでカルマ君は言った。
「いい事教えといてやるよ岡島…俺、中也さんに蝶ちゃんの事頼まれてっから。手ぇ出したら………覚悟しといた方がいいと思うよ」
「ひいっ!!?それだけは勘弁!!すんませんっしたあああ!!!」
空いている方の手で携帯をチラつかせて岡島君に言うと、悲鳴をあげながら岡島君は潮田君の後ろに隠れた。
『…な、何かありがとう?』
「ね、蝶ちゃんの護衛も必要でしょ」
『うん?とりあえず岡島君が危ないのは分かった』
「て、天使よおおっ…!!」
どこかで聞いたことのあるようなフレーズに岡島君の方をしれっと見て、再びカルマ君の方に目を向ける。
『…ね、中也さんも危ない?』
「そこは特例だよ」
『天使って言うの流行ってんのかな』